「所有」や「自我」、ロボットに人間固有の概念は根付くのか?

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ディープラーニングなど人工知能技術を使って、ロボットがこれまで持つことができなかった人間固有の能力を与えようという研究が、米国の大学を中心に進められている。

「所有」は学習できるか?

興味深い事例のひとつにイェール大学のそれがある。同大学の人工知能研究者Xuan Tan氏らは、「所有」の概念をロボットに学習させようとしている。所有とは自分と他人のモノを区別する能力だが、それを与えようとする理由は何か。

現在、各産業の製品をつくる工場では、プログラミング通りに動く従来型の産業用ロボットのみならず、人間を自律的に認知・理解する協業ロボットの発展が望まれている。ロボットが人間と協働する現場を想像してみて欲しい。

例えば、人間がロボットに「柵を木材でつくってくれ」と命令もしくはお願いしたとしよう。その際、ロボットが他の作業者やロボットに与えられた材料もしくは工具を横取りして柵をつくってしまったら、完成品ができるという目標が達成できたとしても、現場はきっと混乱するはずである。

さらに将来的に、工場以外の社会空間でロボットと人間が共生するとなれば、相手の持ち物を見分けるマナーは非常に重要となる。

「自我」のあるロボットとは

一方で、米コロンビア大学のHod Lipson教授チームは、ロボットに「自我」を与える研究を進めている。自我の定義はさまざまなだが、ここでは「自分が何者であり、どんな存在であるのか自覚する能力」としておこう。

教授らがディープラーニングで開発した「自我モデル」を与えられたロボットアームは、当初、自分の姿カタチを認識していない。しかし、用意された約40時間のトレーニングを経ると、自分自身の大きさや部品を認識して一定の作業をこなすことができるようになるのだという。加えて、アームの一部を他の部品や形に入れ替えたとしても、新しいトレーニングを経て適応していくというから驚きだ。

確かに、人間との共生を前提とするのであれば、ロボットが「所有の概念」や「自我」を持つことはとても大事なことになるかもしれない。ロボットが人のモノをむやみに触ったり、自らの大きさやパワーを認識できずに動くとなれば、人間に迷惑をかけてしまことになるからだ。

これまで、ロボットには命令を忠実にこなす「忠誠心」が求められてきたが、上記の研究などを見る限り、将来的には「思いやり」や「空気を読む能力」また、「優しさ」などより人間に近しい能力が求められていくのかもしれない。

連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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