「同質のリスク」を回避せよ / 白河桃子
Me Too運動で日本のビジネス界やスポーツ界でもセクハラの告発が相次ぎました。セクハラは単なる個人の問題ではなく、会社のリスクとして、組織の真剣な取り組みが必要な問題だと認識されるようになりました。関心が低かった中小企業にもこの動きは広がっています。
女性活躍が進まない企業は「同質性のリスク」が高いと言えます。大手メーカーのデータ改ざん事件などの不祥事がありましたが、入社してから一度も転職したことがなく、同じヒエラルキー、同じ人間関係のなかにずっといるような同質性の高い集団は、不祥事が起きやすいと言われています。
多様性のメリットとして、この「同質性のリスク」を回避できることも注目に値します。女性ばかりが多いのもよくありませんが、日本企業はまずは女性を増やすことから始めるべきです。
では、女性をどのように増やすのか。労働時間の問題は大きい。女性が組織に残るためには「長時間労働評価のDNAをアンインストール」することが不可欠です。長時間労働を評価する企業風土を撤廃しなければならない。
やみくもにテレワークを導入しても、長時間労働を当然視する企業風土では女性は仕事を続けられません。男性が育児休業を取ることも重要ですね。女性が出世するには、仕事上のライバルである男性も育児休業を取らなければ、フェアにはならないですよね。
全ての人に「教育」が必要だ / サラ・リウ
私が創設したThe Dream Collectiveはシドニー、上海、シンガポール、東京などに展開し、女性リーダーの育成を通じて企業の成長を助けています。
世界中の企業と組んでやっていますが、日本では特に「教育」が大切です。なぜ多様性が重要なのか、なぜ男性ではなく女性を昇進させないといけないのか、経営層が理解していない。どうして女性を増やすことがビジネスにとっていいのか。それを皆に理解してもらうことが最初のステップです。
また、女性に対して「感情的だ」というステレオタイプが頻繁に聞かれるのも日本の大きな特徴です。男性でも女性でも感情的な人もいればそうでない人もいる。産前休業が必要な人も、必要ない人もいる。人それぞれです。それに、感情的であることは必ずしも悪いことではありません。人の感情がわかるEQ(感情知能指数)が高いことはリーダーの素質のひとつです。
女性を一般化して話すことをやめ、女性らしいとされている特徴が強みであると認識し直すべきです。
日本でダイバーシティ推進のイベントを開くと、同じ人が参加しがちです。ITスキルは年齢に関係なく誰もが必要ですよね。教育も同じです。組織の全ての人を巻き込ことが重要です。それができた上で、計画を立てて、実行する。その際には、外部の専門家の協力を得ることも有効です。
しらかわ・とうこ◎少子化ジャーナリスト。働き方やライフデザインなどをキーワードに著述業に従事。
Sarah Liu◎The Dream Collective創設者。多数のグローバル企業に女性リーダー育成プログラムを提供。