ビジネス

2019.02.11

低迷するテレビ業界に、ネスレ高岡社長が見つけたチャンス

ネスレ日本の高岡浩三社長(撮影=岡田晃奈)


高岡の言う「新しい現実」とは何か。

一つは、テレビしかなかった時代から、インターネットで手軽に配信できるようになったことがある。もう一つは、製作側の問題だ。制作会社や映画監督が直面する課題を認識したことで、企業が独自に高品質なオリジナルコンテンツを作ることができるようになった。ネスレ日本のショートムービーに触発され、独自にコンテンツを作る動きが企業に広がっている。

高岡はネスレ日本で様々なヒットを飛ばしてきたカリスママーケターだが、一体、新規事業をどのように作ってきたのか。

「共通の問題を抱えている人を集めると、そこにチームができる。そしてあまりお金をかけずに新しいことができるかもしれません」

「困っている人」と変える!高岡流サプライチェーン改革

高岡は自身が提唱する「新しい現実」の手法をネスレ日本の企業運営にも取り入れている。例えばサプライチェーンの問題解決だ。

「サプライチェーンだったら、人手不足が最大の問題です。取引先の運送会社は、ドライバーが見つからないのに、物流量が増えて対応しきれなくなっている。若いドライバーを見つけようとしたって見つからないんです」

高岡はそこで、高齢者と新聞配達店に目を付けた。

「将来に不安を抱えている定年退職者で、元気で、車を持っている。彼らに配達してもらったらどうかと考えました」。ウーバー方式だ。

一方、新聞配達店は、新聞の読者の急速な減少で売上が低迷。後継者不足にも直面している。

「新聞を配達するのは、朝刊と夕刊だけ。さらには近所のお客さんのリストも持っている。さらに在庫をストックするスペースもあるから荷物を置くことが可能。それならネスレの商品を運んでくださいと」

「イノベーション」は、必ずしも起業をしなくても生み出すことが可能だ。新しい現実を見て、問題を解決しようとする時、社外も含めて「困っている人」と話してみてはどうだろう?

文=大木戸歩

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