一方、バッシングが出てくるのは民主党サイドからばかりで、信任率が低下するトランプ大統領以上に、この党が苦戦していることを見せつけるばかりで、むしろシュルツはまともなことを言っているという受け止め方も広がっている。
ビジネスマンの看板を掲げ続けるトランプ大統領以上に、ビジネスでの成功者であるシュルツは、去年の6月に会社から引退したばかりだが、当時から政界への進出が噂されていた。
そのため、突然に出馬を思い立ったわけではなく、以前、筆者も触れていたカーマラ・ハリス大統領候補同様、自伝を書き、それが出版になると同時に大統領候補の意思を表わすという念の入れようだ(表明の翌日が発売日)。言うまでもないが、同書は現在、アマゾンではベストセラーとなっている。
カーマラ・ハリス候補(Photo by Mason Trinca/Getty Images)
いまもスターバックスコーヒーの株を大量保有しているシュルツは、総資産が数千億円とも伝えられ、ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、約500億円の個人資金を大統領選に投入する用意があるとのことだ。
これは強烈な数字で、トランプ大統領を例にとると、2016年選挙で彼が個人で集めた政治寄付金が約300億円、共和党や関連団体が集めたものが700億円で、合計1000億円だったので、シュルツはまだ選挙キャンペーンも始まっていないのに、すでにその半分を集めたことになる。すなわち、これは、今後、各候補の大統領選挙資金が底上げされ、史上最大の寄付金集めが展開されることを意味する。
選挙人制度に苦しめられる
シュルツにバッシングを浴びせる民主党やその党員たちの理由は簡単だ。シュルツが出馬すると、確実に三者ディベート(3Way)になり、民主党票が割れ、トランプの再選が確実になるという予測だからだ。
これもちょっと不思議な話で、政策論争もこれからだというのに、まだ政策を発表してもいない候補者に対して、「おまえが出ると現職が有利になるからどけ」ということになる。とくに、元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグはこの批判の急先鋒に立っている。
ブルームバーグは、民主党と共和党を行ったりきたりしていて、去年からは民主党に所属しているが、「自分が2016年の大統領選に立候補しなかったのは、票を割り(当時は無所属)、自分が当選させたくない相手を当選させることになると読んだからだ」とはっきり抗議している。