ビジネス

2019.02.08

春節インバウンド対策は「ライブコマース」から学べ

撮影用スマホに語りかけるセーラームーンさんは中国の大連出身


「これまで別物だったKOLによるプロモーションと販売が同時に行えるところが、ライブコマースの画期的なところだ」と佐々木代表は言う。この手法を日本企業向けに提案するに至った経緯について、彼は次のように語る。

「日本で中国人観光客によるインバウンド消費が騒がれるようになったのは2010年頃から。国内メーカー各社はこぞって中国向けに情報配信を開始した。早い時期からKOLを起用したプロモーションは盛んだったが、当時は、届いた情報を見たユーザーが日本に旅行に来て購入することが前提だった。その後、越境ECの普及で中国在住の消費者に直接販売できるようになった。だが、多くの場合、中国の大手ECモールへの出店には、出店費用やプロモーション費用が数千万円単位で必要と言われていた」

それからしばらくして、KOLによるライブコマースが中国で話題になり始めた。

「ライブコマースの仕組みを使えば、中国に直接進出せず、費用面でも大手ECモールに出店する10分の1以下で始められる。商品のマーケティングも兼ねられるため、将来的に中国進出を目指す企業にもハードルが低く、取り組みやすいはずだと考えた」


視聴者はこのようにスマホの画面で彼女の動画を見ている

ライブコマースは自社の商品を広く認知させ、販売につなげるとともに、売れ筋を探るためのマーケティングも兼ねられると一挙両得だ。

競合するブランドとどう差別化していくべきかについても、KOLの意見を聞くだけでなく、消費者の声も拾うこともできる。コストをかけずに試せることから、無名の中小メーカーでも可能性がある。実際、中国では日本ではあまり知られていない企業の商品が売れている事例はいくつもある。

課題はライブコマースでいったん盛り上がった商品をどうやって安定的に販売していくかだ。基本的に、佐々木代表らが取り組むこの販売手法は、KOLによるSNSを使った日常的な販売と2本立てであり、両者をいかに連動させていくかが重要になる。今後、「そのための新たな仕組みを稼動させる予定がある」と彼は話している。

もっとも、セーラームーンさんのように多くのファンを持つKOLは、自分がいいと思ったブランドしかライブコマースを行わないので、まず彼女らに選んでもらう必要がありそうだ。実は、ここが日本企業にとってのいちばんのハードルかもしれない。

連載 : ボーダーツーリストが見た北東アジアのリアル
過去記事はこちら>>

文・写真=中村正人

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事