そんな中、ロサンゼルスの都市交通局が、クレジットカードやスマートフォンを持たない人々でも利用可能なライドシェアサービスを始動した。LA都市交通局の「メトロ」は、ライドシェア企業の「Via(ヴィア)」と提携し、1年間限定のパイロットプログラムを開始した。
Viaはシアトルでもアメリカ連邦公共交通局の支援を受け、同様なプログラムを運営しており、今回はLA都市交通局と250万ドルの契約を結び、試験運用を開始した。
ニューヨーク本拠のViaはダイムラーからの出資も受けている。同社が展開するのは、ウーバーのようなドア・ツー・ドア型のライドシェアではなく、乗り合いに特化したサービスだ。Viaは同じ地域に向かう乗客を独自のアルゴリズムでマッチングし、同社が「ヴァーチャル・バスストップ」と呼ぶ停留所まで相乗りで運ぶ。
Viaは公共交通機関を持たない米国最大の都市として知られる、テキサス州アーリントンで、定額3ドルの乗り合いサービスを展開した実績も持つ企業だ。
今回のLAでの乗車サービスは、ロサンゼルスの公共交通機関専用の「TAPカード」の保有者の場合、特定エリア内の移動が片道1.75ドルで利用可能だ。また、低所得者用のLIFEプログラムの対象者は無料で利用できる。
一方で、TAPカードを持っていない人の利用料金はやや割高な3.75ドルに設定されており、メトロはこのプログラムを通じて、TAPカードの購入を促進しようとしている。
TAPカードは市内の鉄道駅やコンビニなどで、現金で購入可能なため、銀行口座やクレジットカードを持たない人も、ライドシェアが利用可能になる。さらに、スマートフォンを使用せずとも、専用の受付ダイヤルに電話すれば、配車を依頼できる仕組みが整えられている。
また、コールセンターでは非英語圏の人々向けの通訳サービスも完備し、体に障害がある人用の車両も用意している。もちろん、スマホのVia専用のアプリから配車を申し込むことも可能だ。
利用者が乗車する車両は、ウーバーやリフトと同様なViaが契約を結んだ委託ドライバーのものだが、乗り降りできるのはメトロの停留所と、Viaのヴァーチャル・バスストップに限定されている。
メトロでイノベーション主任を担当するJoshua Schankは、「利用エリアは限定的ではあるが、ここには確実な需要が存在する」と述べた。ライドシェアの利用は急速に拡大しているが、価格が高いために利用できない米国人も多い。
「今回のパイロットプログラムの目的は、これまでライドシェアサービスを使えなかった人たちに移動手段を提供することだ。それにより、メトロの利用人口が伸びることも期待している」とSchankは話した。