グリフィンが買ったのは、バッキンガム宮殿にも近いカールトンハウス・テラスにある「カールトン・ガーデン」の1軒。およそ10年前、鉄鋼最大手アルセロール・ミタルの創業者であるラクシュミ・ミタルが1億1700万ポンドで「ケンジントン・パレス・ガーデンズ」を購入して以来、最も高額の取引となる。
ロンドンでは昨年10月、不動産開発業者のニック・キャンディが所有する「ワン・ハイド・パーク」のペントハウスを担保に借り換えを行っており、その際この物件は1億6000万ポンドと評価された。現時点で、同市内で最も高額なのはこの物件となる。賃貸契約した場合の家賃は、週間当たり15万ポンドだ。
「高額」になる理由
バッキンガム宮殿の改築を請け負った建築家のジョン・ナッシュが設計したジョージアン様式のカールトン・ガーデンには、数多くの著名人が暮らしてきた。第2次世界大戦中にはシャルル・ド・ゴールが居を構えたことでも知られる。
英国の歴代の首相のうち、グレイ伯爵とパマーストン子爵、ウィリアム・グラッドストンもそれぞれ、このうちの1軒で暮らした。
グリフィンが購入したのは、不動産デベロッパーのマイク・スピンクが昨年までに改修を手掛けた物件。新たに地下室2つを設けたことで、面積はおよそ1490平方メートルに拡張されている。屋内プールのほか、スタッフ用の住居もある。
市場の後押しに
グリフィンによる高額物件の取得は、ロンドンの不動産市場の相場を後押しする象徴的な例と見なされることになるだろう。
同市の高級不動産はここ数年、価格が下落傾向にあった。英不動産大手サヴィルズによると、「2018年9月末時点で、相場は2014年と比べて18.4%下落」している。
さらに、英プライベートバンク、クーツによれば、不動産の取引件数は昨年第3四半期、前期比5.5%のマイナスとなった。原因は主に、予定されているブレグジット(英国の欧州連合からの離脱)だ。クーツは販売件数の減少傾向について、「当面続く」と見込んでいる。
ブレグジットがもたらす不透明感の中でも高額物件が購入されたというニュースは、高級物件市場に対する投資家の信頼感を高めることになると考えられる。
実は「お買い得」だった?
ロンドンの高級物件は52%が、昨年第3四半期に行われた不動産鑑定士による見直しで価格を引き下げられている。グリフィンが購入した物件も例外ではない。
関係筋によると、この物件は当初、相対取引での希望価格がおよそ1億2500万ポンドとされていたものの、見直しによって9500万ポンドに変更された。つまり、グリフィンはこの物件を約3000万ポンド安く入手できたことになる。
不動産の値下がりに加えてドル高・ポンド安の傾向が続いていることからも、ロンドンの不動産市場に対する米国人の関心は今後、大幅に高まると予想されている。