ロボットが介護を担う未来、実現は近い?

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医学誌「Interaction Studies」に最近発表された研究結果によれば、高齢者はヘルパーとしてのロボットを喜んで受け入れるものの、ロボットに何でも委ねることには不安を感じている。高齢者とロボットとの関係で鍵となったのは、高齢者がロボットに関して形成したメンタルモデルだった。つまり、高齢者がポジティブ、あるいはネガティブな思考をもってロボットとの関係を始めた場合、両者の関係に大きな影響が出ることが分かったのだ。

「インターフェイスを自律性の面でほとんど人間に近い設計にすると、高齢者は不安や懐疑などネガティブな感情の反応を見せる」と研究チームは説明する。「しかし、それを考慮に入れておけば、高齢者がロボットの介護を受け入れる分野も実際に幾つかある」

英ワイト島で実施された類似研究では、家族の介護を行う人を支援する新技術について、人々は圧倒的にポジティブな反応を示した。特に、力仕事をサポートし介護者の関節への負担を軽減するなど、介護者の身体的能力を補うようなロボットは歓迎される傾向にあった。

介護ロボット

もちろん、だからといって介護ロボットが近々、近所の介護施設に登場するというわけではない。しかし、その方向への興味深い動きが見られるのも事実だ。前出の英議会科学技術局の報告書では、介護にロボットを導入することで60億ポンド(約8500億円)のコスト削減が期待できるとされる。

特に、現在介護サービスが行き届いていない分野は大きな恩恵を受ける可能性がある。テクノロジーの導入により、スタッフは人間でなければできないような精神的ケアにより多くの時間を使えるようになる。しかし報告書では同時に、ロボットが人間の補助ではなく、人間に代わって導入されることで、介護の質が低下する懸念も指摘している。

さらに、介護施設へのロボット導入に際しては、効果的なロボットとの協働方法に関する職員研修も必要だろう。報告書では、そうしたスキルの取得が必要になった場合、ロボット導入で得られる効率性が相殺されてしまう可能性があると認めている。

多くの新テクノロジー同様、ロボットが介護現場で一般化するまでには、ハッカー対策、プライバシー保護、ロボットによる意思決定が負うべき責任に関する法的課題など、越えるべきハードルも多い。私個人としては、ロボットがヘルスケア要員として本格導入されるのは時間の問題だと思う。

編集=遠藤宗生

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