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2019.02.07

「生産地獄」を生き抜いたテスラ、労働環境の改善を発表

Photo by Sean Gallup/Getty Images

昨年、テスラがEVの生産台数を倍増する計画を発表した際、CEOのイーロン・マスクは「生産地獄になる」と述べた。しかし、2018年の同社工場における労災発生数は前年から横ばいにとどまった。

メディアは、これまでテスラの労災発生数の高さや、怪我の報告が徹底されていないことを批判しており、同社は安全手順の強化に取り組んでいた。テスラは、カリフォルニア州フリーモントにある工場で「モデル3」「モデルS」「モデルX」を生産している。同社で安全責任者を務めるLaurie Shelbyによると、昨年の同工場における労災発生数は、労働者100人当たり平均6.2件と前年並みだったという。

これは、2017年の自動車業界全体の労災発生数と全く同じ割合だった。マスクは当初、モデル3の製造工程をほぼ全てロボット化するつもりでいたが、昨年初めに計画を変更し、人間の手による組み立てを優先させた。

2018年中頃には、モデル3の生産台数を週5千台に到達させるため、工場の壁の外部にテント式の新しい製造ライン「GA4」を組み立てた。この結果、全モデルの年間生産台数は24万5千台以上と、2017年の10万1312台の2倍以上に達した。

それと同時に従業員数も増え、工場で働くフルタイムの従業員は1万人以上、契約社員は5千人以上に増加した(テスラは今年1月にフリーモント工場の数百人を含む3千人の解雇を打ち出している)。

「モデル3のローンチやGA4の設置、従業員数の増加などを考慮すると、労災発生数の結果について誇りに感じている」とShelbyは述べた。Shelbyはかつてアルコアで安全責任者を務め、2017年にテスラにスカウトされた。当時、テスラの労災発生数は他の自動車メーカーに比べ格段に多かった。「業界平均と同水準になったことには満足している」とShelbyは話す。

近年、テスラ工場の安全性に対しては厳しい目が向けられていた。2017年5月には、労働者支援団体「Worksafe」が全米自動車労働者組合と共同で行った調査で、テスラ工場での2016年までの労災発生数が自動車業界の平均よりも31%も高いことを発表した。

また、NPO「調査報道センター(Center for Investigative Reporting)」が提供するニュースサービス「Reveal」は昨年、テスラが労災発生件数を過少報告しており、労働者に対する医療ケアが不十分であると報じた。

これに対し、テスラは「労組支持者と直接関係のある過激団体によるイデオロギーを背景とした攻撃」と断じた。
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編集=上田裕資

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