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2019.02.09

「デニム=アメリカ」の概念を変えた男。あのイタリア・アパレルグループ売上2000億の理由

ディーゼル創業者、オンリー・ザ・ブレイブ・ホールディング代表のレンツォ・ロッソ(Getty Images)


━━究極にエレガントなメゾンコレクションでジーンズを見かけるとき、どう感じますか。

デザイナーたちがデニムをどう解釈して、どう取り入れているのかを見ることはとても興味深いですよ。わたし自身は、ある時点から勝負の仕方を変えたんです。加工方法に的を絞ったんです。ディーゼルでは、加工によって特殊な印象を与えることに焦点を当ててきました。たとえば、革や金属素材に見えるデニムなど。

でも、一般的に今は、加工というよりは、シルエットや着こなしによって新しい装いを生み出すことにより注力する傾向にありますね。意外なタイプの衣服にデニムが使われているのを見ると、うれしくなります。

━━ジーンズ市場で、さらに高い成長を見込める領域はありますか?

売上拡大のために、とくに意識して働きかけるべき領域があるとは思いません。でも気づけば、デニムに関わろうとするクリエイティブな人材は、世界中から集まっています。

われわれのグループは、イタリア、トリエステのファッションコンテストITS(インターナショナル・タレント・サポート)やフランスのAndamファッション・アワードなど、突出した才能を持つ人材の支援を目的とする多くの事業をサポートしています。審査員をしていると、デニム文化のない地域出身でいながら、デニムを使った挑戦に取り組んでいる若者に出くわすことが多々あります。すでにジーンズは普遍的な素材ですね。


「(ジーンズの)稀有な特色は、ほかにはない意外な形に自ら変貌できるし、ファッションに変化をもたらすことも可能という点でしょう」

━━イタリアにおけるデニム業界の、現在のポジションは?

製造と仕上げ加工に関しては、イタリアは世界でトップだと気負いなく言えます。イタリアのデニム生産者は正直言って、他の国にはない技術力を持っていますよ。ディーゼルに関して言うと、社内で日々研究を重ね、世界中で生産される製品を注視しています。私は、われわれのジーンズ以外で着てみたいと思わせられるものに、いまだかつて出会ったことはないですね。

━━この業界で働く人材にアドバイスはありますか?

デニムの「形状」にこそ焦点を当てなさい、と言いたいですね。なぜなら、素材の品質や加工の質には、現状すでに、あまり大きな余白は見いだせないので。デニムはすでに、手ざわりや見た目のバリエーションに富んでいるので、思いもよらない用途を生みだすことに精力を傾けるのがベターでしょう。つまり、まさにコレクションのデザイナーたちがやっているようなことですね。

━━社内のデザイナーからアイデアを引きだしたり、彼らの成長を促したりするためにどんなことを伝えたいですか?

自分は他人より優秀、という意識は決して持たないこと。優越意識は危険です。私は全員に、自分たちはつねにポールポジションに陣取っていて、ロケットスタートの準備は完璧だ、いつでも勝ちを取りに行ける、という気概を持ってもらいたいんです。

翻訳=大村紘代 編集=石井節子 写真=Forbes Italia提供

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