2017年、「新宿 マルイメン」店頭も「レインボー」に色づいた。
年長者と若手が強みを生かしあう
杉山:2016年のレインボーパレードでも感じましたが、マルイは社員の積極性がすごいですよね。僕も何度かLGBTの講習会に呼んでもらいましたが、参加者全員が熱意をもって聞いてくれて、本当に驚きました。どうやってあんなに自主性の高い会社を実現したのでしょうか。
青井:ずっと「やらされ感」のない会社にしたいと思っていました。そこで、以前は幹部社員を集めて開催していた中経推進会議で、幹部社員の召集をやめました。新入社員も含めて自主的に参加したいと思う人だけが来る挙手制にしたんです。やる気のある人だけがいるので雰囲気が良いし、情報の伝達もしやすいですよ。
杉山:しかし会議への参加を挙手制にしてしまうと、会議に出ない上司のせいで現場への情報伝達が上手くできないのでは……。
青井:そうした会議は会場の都合上、350人程度しか収容できないので、事前に論文を書いてもらってやる気を判断しています。名前を伏せて審査し、優れた論文を書いた人だけを採用するのですが……。すると上司が軒並み落ちてしまって(笑)。
杉山:それはひどい(笑)。
青井:杉山さんのおっしゃる通り、上司が会議に出られなくなると、上司が会議で得た情報を部下に伝達してリーダーシップを執ることはできません。それで何が起こったかというと、店長が売り場の若者に論文の書き方を聞くようになったんです。また、上司が参加できない場合は、部下に頼んで後から言語化してもらうようになりました。
この方式が定着してからは、優秀な部下を持つことが上司の自慢になりました。内容によってはあえて会議を若手に任せて情報を整理してもらい、帰ってきた部下に報告を聞く人もいるそうです。
若手は発想ややる気を、上司はリーダーシップや経験というように、それぞれの強みを生かせる環境ができてきています。
杉山:上司から部下への一方的な力関係ではなく、上下を超えた関係性になっているということですね。個々人に主体性を求めている企業は多いですが、上司と部下が互いを尊敬しあえる環境をつくるのは、簡単ではありません。
青井:まさにその通りです。最近ではマルイのLGBT施策が外部に取り上げられることが増えたので、社員も自分たちの取り組みに自信をもてるようになりました。
かつてはダイバーシティに懐疑的だった年配層の社員たちも、今では自社の先進的な取り組みを自慢しています(笑)。誰もが自分の力を活かし、自分の在りたい姿に近づけるように、これからも社内外を問わずインクルージョンを実施したいですね。
連載:LGBTからダイバーシティを考える
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