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2019.02.06

宇宙旅行はビジネスとして成り立つのか?

Max Meinzold / shutterstock.com


宇宙弾道飛行には複数の問題があり、その多くが金銭面でのものだ。私が2004年に見たロケット打ち上げは宇宙旅行の始まりではなく、「風潮」だったのかもしれない。スペースシップ1は、賞金1000万ドル(約11億円)の有人宇宙飛行コンテスト「アンサリXプライズ」で競った25以上のエントリーの一つだった。しかし、スペースシップ1が優勝後、競合企業のほとんどは他分野に移るか、廃業している。また、技術的障壁から破綻した会社もある。

ヴァージン・ギャラクティックに最も近い競合企業とみなされていたのは、エックスコア・エアロスペース(XCOR Aerospace)だった。同社は、2席を備えたリンクス宇宙船を1日に4回飛ばす計画を立てていた。エックスコアの売り込みは魅力的で、チケットは10万ドル(約1100万円)と比較的安価だったため、購入者は280人以上に上ったが、同社は2017年11月に破産を申請した。

一方のヴァージン・ギャラクティックには、競合と比べ資金の不足はないようだ。英紙フィナンシャル・タイムズは2014年11月、同社は約6億ドル(約660億円)の融資を受けており、うち3分の2がアラブ首長国連邦からの投資だと報じた。

また、2017年にはサウジアラビアから10億ドル(約1100億円)の投資が発表されたが、同社の創業者であるリチャード・ブランソン会長は昨年末、サウジアラビア人記者のジャマル・カショギが失踪した昨年10月の事件を受けて、同国との協力関係を「一時的に見合わせる」と述べた。

ヴァージン・ギャラクティックには、他にも問題があった。宇宙産業を後押しするスペースニュース(SpaceNews)さえもが報じているように、同社は当初、宇宙旅行の開始を10年前に予定していたが、技術的問題で開発が遅れ、2014年には試験飛行に問題が発生。

さらにモハベでは、副操縦士が死亡、操縦士が負傷する墜落事故が発生し、事故調査により開発はさらに遅れた。それでもヴァージンは耐え忍び、2018年12月にはスペースシップ2がついに試験飛行で宇宙に到達した。

民間宇宙産業では誇大広告も避けられないようだ。事実を集約するはずのウィキペディアでさえも「宇宙旅行」の英語版ページ「Space Tourism」は楽観的で「宇宙弾道旅行は2018年時点でまだ実現していないが、より手頃な価格になることが見込まれ、利益を生むと多くの企業が考えている」とある。

しかし、スペースシップ1の設計者、バート・ルータンはそれほど楽観的ではない。彼は2017年のポッドキャストで「一体どうしたっていうんだ? 何も実現できていないじゃないか!」と指摘した。

しかし、ヴァージン・ギャラクティックの顧客は同社を信じ続けている。同社に宇宙旅行の頭金を払った顧客は、10年間で700人ほどもいる。ブランソンは、自身が最初の宇宙旅行客の1人になると約束している。そうなれば、今年69歳を迎えるブランソンは、宇宙飛行をした中で過去2番目に高齢な人物となる。

他社はブランソンと競合し負けた。しかし宇宙弾道旅行ビジネスは、15年たった現在も打ち上げに至っていない。

編集=遠藤宗生

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