同社は、インドへの製造拠点の移転について何もコメントしていない。しかし、ロイターの報道によると、3億5600万ドル(約390億円)を投資してタミル・ナードゥ州にあるiPhoneの組み立て工場を拡張する予定だという。
フォックスコンはこの報道を否定しておらず、これが事実である可能性は高い。インドでの製造により、iPhoneのインド国内での販売価格を引き下げることが可能になり、急拡大する中間層への普及を促進できるため、アップルとフォックスコン両社にとって理に適っている。フォックスコンは、過去8年にわたって生産ハブを中国から他の地域に移転しており、インドへの移転もその一環と見られる。一部の専門家は、インド政府がフォックスコンを誘致するために、有利な条件を提示したと見ている。
「どの国も自国での生産を望んでいる。インドは巨大なマーケットであり、絶対に進出するべきだ」と台湾に本拠を置く投資コンサルティング会社Quantum International Corpでシニアアドバイザーを務めるJohn Brebeckは話す。
ドイツ銀行リサーチによると、インドの中間層人口は3億〜6億人。また、マッキンゼーは、消費者市場の規模でインドは2007年の12位から2025年には5位に躍進すると予想している。アップルにとって、インドはハイエンド端末の潜在ユーザーが急増している魅力的なマーケットなのだ。
インドでiPhoneを製造することで、関税や輸送費を避け、端末の販売価格を下げることが可能になる。インドでは、シャオミをはじめとする低価格の中国製アンドロイド端末が22%ものシェアを占め、2018年中間期でのiPhoneのシェアはわずか1%に過ぎなかった。
米ウィスコンシン州は2年前、100億ドル規模の液晶パネルディスプレイの工場誘致のために、フォックスコンに対して300万ドルの補助金を提示した。インド政府が同様の条件を提示したかは不明だが、同国のモディ首相は経済成長を維持するために外資の誘致に積極的に取り組んでいる。
コンサルタント会社Dezan Shira & Associatesによると、インドの経済特区で組み立てられた製品は非課税で、同国で調達した部品の輸出も付加価値税が100%還付されるという。