Oxford Economicsが先日公開したレポートで「米国は世界的な旅行ブームのなかで、市場シェアを低下させ続けている」と指摘された。2%の伸びならば、さほど悪い数字に思えないかもしれないが、欧州やアジアが6%の上昇、中東が10%の上昇だったのと比較すると、かなり残念な結果だ。
Tourism EconomicsのAdam Sacksは「世界的な景気減速のなかで、多くの国の通貨はドルに比べ安くなっている。また、近年の米国の政策が観光客にネガティブな印象を与えている」と述べた。
「政治的要因で旅行客が減少したのは、ここ2年のことだ。とりわけ、中東やメキシコ、中国やドイツからの旅行客は減っている」とSacksは続けた。2018年の前半は中国やドイツに加え、韓国や日本からの旅行客数が大幅に減少したという。
「中国から米国に向かう旅行客数は、それ以前の10年間は毎年23%のペースで伸びてきたが、昨年の伸びはゼロ%になった。背景には米中間の貿易摩擦があげられる。また、韓国もかつては毎年11%のペースで伸びていたが、昨年は前年度から3%の減少となった」
また、欧州を見てみると、ヨーロッパ最大の経済規模を誇るドイツからの観光客は2018年に7%の減少となった。この背景にもやはり、米国の不人気な外交政策があげられそうだ。
さらに、アルゼンチンからの旅行客も2%の減少となっている。「アルゼンチンの場合は、通貨安と経済の悪化が主要因になっている。ペソの価値は急落しており、アルゼンチン経済も危機的状況にある」とSacksは述べた。
ただし、米国への旅行客が減少している主要因の一つは、ドル高が進み、米国への旅行費用が値上がりしたためだとSacksは指摘する。「過去5年で米国への旅行費用は、平均10%以上の値上がりになっているが、これは各国の通貨の対ドル交換レートが下がったことによる。世界の多くの国の人々にとって、米国への旅行は割高になっている」
米国の旅行業界の苦戦は今後も継続する見通しだ。International Inbound Travel Growth Projectedは、米国においては海外からのインバウンド観光だけでなく、国内の旅行者数も2019年は減少する見込みだという。
国内の旅行客の減少は、貿易摩擦や景気悪化への懸念によるものだというが、これは観光旅行客だけでなく、企業の出張需要も低下させることにつながるとアナリストは述べている。