「信頼感の欠如」では済まない米中間の本当の問題

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米経済学者のタイラー・コーエン教授は先ごろ、米中関係の弊害となっているものについての自身の考えを示した。

金融ジャーナリストとして国際経済問題を追ってきた筆者が常に称賛の念を抱いてきた同教授によれば、問題は両国の貿易関係ではなく、「信頼感の欠如」だという。

だが、教授のこの言葉は、あまりにも控え目だと言わざるを得ない。その理由として特に指摘したいのは、次の6つの点だ。

1. 2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟した後、中国は世界の鉄鋼産業を支配することを目的に、自国の鉄鋼部門の国有企業に多額の補助金を拠出してきた。

それらの企業が大成功を収めたのは、政府から供給される無料の電力によって高い価格優位性を維持し、欧米の鉄鋼会社を市場から締め出してきたためだ。これは明らかに、WTOの規則に違反する。

2. 中国は自国の領土を大幅に拡大し、国際水域と海洋法を信頼する「厚かましい」国を脅かすため、南シナ海での人工島の建設に力を入れてきた。マレーシアと台湾、ベトナム、フィリピンに、南沙諸島について中国との間で「信頼感が欠如している」のかどうか、尋ねてみてほしい。

3. 中国の製薬工場は安価でヘロインよりも10倍強力な「フェンタニル」を大量に生産し、郵便を使って米国の業者に販売している。厳重に統制された警察国家である中国で、その業者が特定されていないと思う人がいるだろうか?

4. 中国軍のハッカーたちは、米国の軍事機密ではなく民間企業の情報を盗んでいる。そして、それらを中国企業に提供し、外国企業との競争における優位性を与えている。

5. 中国政府のハイテク産業育成政策「Made in China 2025(中国製造2025)」には、鉄鋼産業と同様に世界の半導体産業を支配するための指示が含まれている。国有企業は今後、手に入れることができる欧米の企業を全て買収しようとし始めるだろう。

6. 中国は米国の大学で教育を受けた何千人もの中国人エンジニアに頼っている。米国の大学は外国人留学生に対して友好的だ。だが、これらの大学が授けた知識が米国の主要産業への攻撃のために使われている。
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編集=木内涼子

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