その課題をもとに、マリエが決心をする。新たなプロジェクト「THE LEFT OVER」を始動させたのだ。このプロジェクトは廃棄物のアップサイクル、受注生産を軸に「必要な分だけ生産する」というファッション業界における、新たな生産背景の構築を目指したもの。
第1弾の商品は廃材を活用した“すべてが一点物”のラグマット。2018年12月にはMakuakeを活用し、クラウドファンディングを開始している。
まさかの反響。「やばい、生産が追いつかない……」
マリエがTHE LEFT OVERを始めたのは、2018年5月頃のこと。前述したファッション業界が抱える課題を踏まえ、廃材を使ってどんな製品がつくれるのか。メンバーたちと「このアイデア良さそうかも」「でもそれ商品として売れるの?」というやり取りを繰り返した末、第1弾の商品はラグマットにすることが決まった。
創業128年の歴史を持つ「渡六毛織工場」の協力のもと、試行錯誤を続けること約2カ月。7月に納得のいく仕上がるのラグマットが出来上がったという。
しかし、すぐさま大々的に販売することはしなかった。「PASCAL MARIE DESMARAISでTシャツやロンTなどを販売していく中で、ブランドの活動として大義があるものも必要だろう。そう思い、試しに販売してみることにしたんです」と、マリエは当時のことを振り返る。
彼女が販売場所として選んだのは、2018年夏に銀座三越で開催されたポップストア。売り場は3階。周りには自身のブランドとは毛色の異なるお店が並ぶ。
「銀座三越に足を運ぶ多くの人は、何か新しい洋服やアクセサリーを探しにきている。そんな人たちがラグマットを手にするのか……」。マリエのラグマットに対する期待値は低かった。
「とりあえず置くだけ置いてみよう」。そんな気持ちで販売したラグマットだったが、結果はマリエの予想を超えた。Sサイズは19,800円(税込)、Lサイズは37,800円(税込)と決して安い価格とは言えないが、飛ぶように売れていったのだ。
その実績を風の便りで耳にした、アメリカの某セレクトショップから「100個オーダーしたい」と注文が入った。ブランドとしては嬉しい連絡だが、マリエの脳裏によぎったのは「不安と焦り」だった。
「このラグマットは1枚1枚、丁寧に編み込んで作っているので100枚のオーダーにはすぐに対応できない。需要はあるのに供給体制が整っていない。ビジネスモデルとして崩壊しているし、大きなビジネスチャンスを逃している。悔しくて悔しくてたまらなかった」(マリエ)
どうずれば欲しい人に対して、きちんとラグマットを届けることができるのか──あれこれ考えた末にたどり着いた結論が「クラウドファンディングの活用」だった。Makuakeの担当者と話をし、その場でプロジェクトを始めることを決めた。