「ウェディング業界の常識」を打ち破った新しい働き方|渕上ファインズ

Dress the Life

ウエディングドレスショップを全国53店舗展開するDress the Life。約340名の社員の9割以上を女性が占めるが、8年前までは妊娠・出産を経て職場に復帰するケースは数えるほどだった。

土日祝勤務はウエディング業界の基本であり、平日も仕事帰りにショップに立ち寄ってドレスを試着する顧客が多いため、残業が多い。

「採用って会社の未来を語るでしょう。結婚しても出産しても働けるよ、私もそうやって働いているよ、と伝えて入社してもらったのに、ハードワークと家族を持つというライフプランの壁が厚くて、離職が後を絶たなくて」
 
以前は採用業務を中心に行っていたというHRマネジャーの緒方絵美は、現在8歳の娘を育てながら働くママ社員のひとり。妊娠中のタクシー出社支援、子どもの記念日休暇、病児保育費補助など働くママをサポートする「MAMA THE LIFE」は、緒方が中心となって2014年に導入された制度だ。

「ママ社員やプレママ社員で集まって実施するMAMAサークルでは、育児と仕事の悩みや、両立の秘訣を相談しあえるんですよ」。その結果、8年前は数人だったママ社員は現在50名ほどにまで増えた。19年春には15名が戻ってくるという。
 
緒方が次に取り組んだのは、働き方の多様化だ。1年前にダイバーシティ推進室をひとりで立ち上げ、働くことを楽しめる環境づくりを目指した社内専用サイト「HataLife」をリリース。

人事規定や福利厚生などに加え、働き方改革先進企業の取組内容や働き方に関するコラムを定期的に更新することで、「新しい価値観に触れられる」「働き方改革を前向きに捉えられるようになった」「自社だけでなく、社会全体で取り組んでいる一体感を感じる」など、社員一人ひとりが前向きに働くマインドづくりに一役買っている。
 
また多様化に欠かせない新しい働き方のフォーマットづくりに関しては、18年3〜8月、接客担当コーディネーターを10名以上抱える福岡の大型店で土日祝の公休を設定し、希望者順に休みを取得してもらった。その結果、前年は0日だった土日祝の公休が、半年で61日に。懸念していた売り上げにも悪い影響は一切出なかったという。
 
当時、この大型店の店長だった野口真子によれば、成功の秘訣は「週末に休みを取る分、平日に段取りよく仕事を進めようと、メンバーに考える力がついたこと」。企業側の仕組みが社員の成長を促す好例だろう。19年春からは地域限定正社員の導入も決定している。

「私たちの成功事例をブライダルの関連企業さんにも共有することで、業界全体を変えていけたらと思うんです」。一人ひとりに“仕事の喜び” を取り戻すDress the Lifeの働き方改革が、ウエディング業界の常識を打ち破る日も遠くはない。

文=伊勢真穂 写真=野村恵子

この記事は 「Forbes JAPAN 世界を変えるデザイナー39」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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