モノより「プロセス」、まちのものづくり屋さんの挑戦

茨城県の木内酒造でできる「手作りビール体験」

1年を通してみると、12月から春先にかけて、ハンドメイドなどの創作体験ニーズが高まる傾向がある。

最も顕著なのは、アクセサリー作りだ。カップルがクリスマスに向けておそろいのペアリングを制作したり、夫婦が夫婦茶碗や湯のみなどを創作するニーズも高まる。寒いからインドアなアクティビティが好まれるという理由もあるかもしれない。

2月に入り、これからはバレンタインデーやホワイトデー、卒業、入学などプレゼント需要が高まる時期。市販の商品よりも、なにか一捻りを加えたオリジナルなものをプレゼントしたいというニーズはピークとなる。

「世界に一つだけの○○」という謳い文句が人の購買力をくすぐるように、自分の手で唯一無二のものをつくることは、値段以上の付加価値になる。「有名ブランドの高価な指輪よりも、想いがこもった手作りの指輪」という傾向は、「モノよりコト」消費が騒がれる中で強くなっているように思う。

インクもメガネもハイヒールも

それに伴うかのように、創作できるジャンルも増えている。有名な例としては、文房具セレクトショップでもあるカキモリが手がけるショップが面白い。

蔵前に構える「カキモリ」では、表紙から紙質までこだわったオリジナルなノートを作れる。また「inkstand by kakimori」という名の店では、自分好みの色でインクを作り、ボトリングすることができる。自分用はもちろん、プレゼントでも喜ばれるだろう。



ところ変わって西荻窪、駅前の商店街の一角にある眼鏡屋「glass工房602(ロージー)」では、2.5万円からオリジナルのメガネを手作りすることができる。15年前、チェーン店の既製品に対抗するために開始したサービスの一環で、以来好評だという。

世界に一つだけの眼鏡のニーズは多岐にわたる。例えば、顔の横幅を気にする人が、市販のフレームでは種類が少ない「横長」なものを作るという機能的な要望。または、自分好みの色や素材、形に仕上げたいというデザイン的な要望。完全フルオーダーで眼鏡を手作りできるところは都内でほとんどないため、町企画の雑誌などでもよく掲載され、PR効果も高いとのことだ。



恵比寿にあるOTO Workshop(オトワークショップ)では、レディースシューズを手作りできる。15年以上前から「OTO」というブランドで靴の製造・販売を続ける中、5年ほど前に専門学校で講師をしたことをきっかけに、教えて手作りを楽しんでもらうワークショップを開始したという。

サンダル、パンプス、ブーツ……と創作できる靴の幅はかなり広いものの、一番人気はオーソドックスなパンプス。ハワイやアフリカなど海外からも体験に訪れる人もいる。

代表の乙さんは、「もともとの製造・販売から、ワークショップの方に徐々に優先順位がシフトしている。バイヤーを介することなく、直接的に生活者が欲しいと思っているものを実現できる今の形が純粋に楽しい。受講回数を増やしすぎないことで、手作り感がない“本物らしい靴”に仕上がることを意識している」と語る。

ワークショップは、作る側が楽しいだけでなく、体験を提供する事業者にとっても、完成に喜ぶ顔や声を肌で感じることができ、仕事のモチベーションになっている。


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文=フォーブスジャパン編集部

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