がんと闘う子どもたちに届く「バレンタインチョコ募金」 パッケージ缶に秘められた物語

2019年は「戦場のたんぽぽ」がテーマ(写真=ジムネット)

イラクのがんの子どもたちに薬を届ける「JIM-NET(ジムネット) 日本イラク医療支援ネットワーク」はバレンタインデーに向け、北海道の老舗「六花亭」の協力を得て募金のお礼にチョコレートを用意しています。2019年は、がんの子どもたちが「戦場のたんぽぽ」をテーマに描いた絵がパッケージに。その缶には、チョコレートと子どもたちの物語が詰まっています。

イラクで出会った少女と果たせなかった「約束」

ジムネットの事務局長・佐藤真紀さんに、活動のきっかけを聞きました。

「イラクは1990年代半ばから小児がんの患者が増え、91年の湾岸戦争で使われた劣化ウラン弾が原因ではないかと疑われました。2003年のイラク戦争でもウラン弾が使われました。イラクの病院に行っても子どもたちとどう接していいかわからず、病院の医師に聞くと『経済制裁をやめて、抗がん剤が入るようにしてほしい』と言われたんです」

03年、イラクの首都・バグダッドにある病院で絵が上手なラナに出会い、佐藤さんは日本の「友達」と手をつないでいるラナの自画像をウェブに公開。戦争が始まり、ラナに色鉛筆をプレゼントする約束はかなわず、最後に会ってから5日後に亡くなってしまったそうです。イラクのがんの子たちを支援するプロジェクトを始め、長野で地域医療やチェルノブイリの支援に取り組む医師・鎌田實さんにもメンバーになってもらいました。
 
チョコレートが、障害者の仕事を生み出す


シリアからイラクに逃れた少女。支援を受け治療中
 
楽しい企画をして募金を集めようと06年、バレンタインにちなんだキャンペーンをスタート。募金した人にイラクの子どもたちの絵を付けたチョコレートを渡しました。翌年は北海道の「六花亭」が協力し、チョコレートを原価で提供してくれることに。09年は絵が上手だった少女・サブリーンの容態が危なく、応援したいとサブリーンの絵をプリントした缶のチョコレートを作りました。

毎年、個数が増えて六花亭のキャパシティーである16万個に。8000万円の募金をキープできるようになりました。1個550円の募金から原価や人件費をひいて335円が支援に回せるとか。発送は福祉作業所が担当し、障害者の仕事を生み出しています。毎年12月にチョコ募金を始め、なくなり次第終了。2200円の募金と送料で4缶が送られます。
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文=なかのかおり 写真=ジムネット

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