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だが、プレイズマンはこの「徹底的な透明性」がひとり歩きしている現状に違和感を覚えている。

「世の中では一般的に『どうすればうまくいくか?』と考えがちです。しかし重要なのは『正しいことは何か?』という問いであり、“透明性”は我々が提示している答えの一つにすぎません。顧客にメリットがあり、選択の材料になるから行なっているのです」

前者の場合、“常識”にとらわれてしまい、日常業務や仕事を滞りなく回すだけのルーティン作業になってしまう可能性が高い。言うなれば、“思考停止状態”である。だからこそプレイズマンは、それを避けるために、まずは「正しいことは何か?」という問いから入るのだ。

自らを“人類学の信奉者”と呼ぶ彼は、教育システムや行動様式、社会常識などいくつかの点を除けば、「今日の人類は3000年前とさほど変わらない」とさえ言う。そして、人はバイアスや文化規範の罠に陥ってしまうものだと指摘する。

「人々の生活を観察していますよ。仮にパターンを見つけた場合、それをより良い、より正しい構造でインセンティブ化できないか、考えてみるのです」

インパクトを与えるツールとしてのデザイン

正しいことは何か。プレイズマンはその問いの原点をマイクロソフトとグーグルに求める。90年代後半〜2000年代にかけてマイクロソフトは、OS(基本ソフト)の「Windows」とそれに付随するブラウザが爆発的に普及したこともあって市場を占有。「帝国」と呼ばれ、米連邦政府や欧州連合(EU)、他企業から独占禁止法違反の疑いで提訴されてしまう。すると00年代前半に、グーグルが「Don’t be Evil(邪悪になるな)」という非公式の行動規範と共に現れた。プレイズマンはそれに衝撃を受けたという。

「世の中には色々な人がいます。ただ偉くなりたい人や、周りからどう見られているかしか気にしない人とか、いくらでもいますよ。それでも、最後は誰もが『選択』することになる訳です。そのとき、多くの人は世界により良いインパクトを与えるほうを選ぶのではないでしょうか。そのためにも、私たちはそうした選択肢を提供できる会社でありたいのです」

ただ、偽善を装うつもりはない。いくら避けたくても、環境にある程度の影響は与えるし、ビジネス機会によっては難しい判断を迫られることもあるだろうと、プレイズマンは認める。

「完璧であることは難しい。それでも、一つでも多くの正しい行いをするよう心がけていますよ」

そして人を動かし、世界にインパクトを与える武器となるのがデザインとストーリーテリングなのだ。

社名にも“ストーリー(物語)”があるのか? そう問うと、プレイズマンは「すべてのものに物語がある」と、目を輝かせた。永続的な時間を表すときに使う「Ever」と、デジタル企業であることからあえて物理的で親近感のわく「Lane(小道)」という言葉を組み合わせることにしたという。

昔からあり、これからもあり続けたい──。「正しいことは何か?」。そう問いながら、プレイズマンはエバーレーンを育てるつもりだ。


マイケル・プレイズマン◎カーネギーメロン大学を卒業後、ベンチャー投資会社「エレベーション・パートナーズ」で勤務。2010年、25歳のときにジェシー・ファーマーとエバーレーンを立ち上げた。

文=井関庸介 写真=ラミン・ラヒミアン

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