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「壊れた小売業界」をつくり直す

もともと、プレイズマンのなかには“起業家のDNA”が眠っていた。起業家の父をもち、比較的自由な気風の西海岸で生まれ育ったことも大きい。子供の頃から建築や家具のスケッチをしたり、高校では新聞部やロボット研究会に所属したりするなど、「メイカー(モノをつくる人)」になる素地もあった。

やがてアップルやグーグルといった“スタートアップ”が世界的な企業へ成長するのを間近で見て、意思とアイデア、そして然るべきチームさえあれば起業できると考えるようになったという。


サンフランシスコのミッション地区にあるバレンシア店

──問題はどのような会社をつくるか。プレイズマンは以前から「小売業界」に目を付けていた。彼には小売業が“壊れている”ように思えたのだ。

「人が買い物をするとき、じつは自分が買っていると思っているモノと、実際に購入しているモノは異なるのです。ブランドは自分たちにとって都合のいい労働環境で社員を働かせられますし、価格だって自由に設定できます。その点、買い物客は最終製品しか見えません。製品の製造過程がわからない状況での買い物を強いられているのです」

この情報の非対称性に対するヒントをプレイズマンは「食」から得たと話す。食品の栄養や添加物を開示するのが当たり前になったいま、小売業界でも同じことが起きていいのではないか。なかでもファッション業界はサプライチェーンが不透明に思えた。その情報を開示すれば、消費者に選択肢を与えることができる。

一方で、食べたらなくなる食品と違って、服は目に見える形で個人のアイデンティティを形成するうえ、デザインや文化として伝播されることで世界中の人々に影響を与える。そうしたことから、ファッションブランドを立ち上げることに決めたのだ。

方法論としての「徹底的な透明性」

ところでエバーレーンが急成長した主要因に高品質の製品とD2Cモデルが挙げられるが、もう一つ同社の特徴としてしばしば紹介されるものに、「Radical Transparency(徹底的な透明性)」なる思想がある。

同社は製造や物流など、最終製品として販売されるまでのコストをウェブサイトで開示しており、それもまた熱心な固定客を集める一因になっている。例えば男性用のTシャツならば、材料費1.79ドル、生産コスト5.35ドル、物流に0.13ドルで本当のコストは約7ドル、販売価格は16ドルというふうに内訳を明かしているのだ。

文=井関庸介 写真=ラミン・ラヒミアン

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