コスプレを17年続けてわかったこと。社会の評価基準は、いずれ変わる

Atsuko Sakai -Hikari-

筆者は新卒から10年間国内外の金融機関でファンドマネジャーをした後、前々からの夢であったお洋服ブランドを立ち上げ、その傍らで17年間続けたコスプレイヤーとして世界にも出つつ活動している。

起業をしてからいろんな人と話をする機会があるが、こんな相談をよく受ける。「自分が人生で本当にやりたいことが何か分からない。今さら、自分にどう向き合っていいかも分からない」

そういう時は、自分がやりたくないと思うことを少しずつ辞めていけばよいと思う、と伝えていたが、それだけじゃ伝わらないと感じていた。

せっかくの機会なので、ここに筆者の例と共に一つの考えを書きたい。

心から好きだけど周りに言えない

筆者がコスプレを始めたのは17年前、学生の頃だった。

当時は今ほどコスプレはメジャーではなく、本当に小さなコミュニティで楽しむものだった。

また当時は、オタクに対する偏見が今より強く、メディアのオタクに対する報道も「社会的問題児」という表現に寄ったものが多かった。結果、学生時代の筆者はコスプレをしつつも、どこかで「私は社会的に問題があるのかも、そしてコスプレがバレたら周りから冷たい目で見られるかも。だから絶対に黙っていよう」と考え、自分が大好きな趣味であるコスプレを愛せずにいた。

また、スノボやダイビングが趣味で、公私共にキラキラした人たちが羨ましくもあった。「来世はそんな人間に生まれたいものだ。どうして自分はコスプレ好きなのだろう…!」と嘆いたこともあった。

私の中に、2人の「自分」が存在しているような感じだった。キラキラした周りの環境に溶け込むために擬態している自分と、コスプレを精一杯楽しんでいる自分。

当時の私は、コスプレしている自分を“幼稚な自分”と心の中で呼んでいた。「コスプレはどうせ良い年になったら辞めるんだ、偏見の材料にされるだけだし、下手に公には出さず墓場まで持っていこう」とも思っていた。

実際、誰かの何気ない「まだコスプレなんてやっているの!?」みたいな言葉をいちいち気にしてもいた。

今思えば、実にもったいなかった。
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文=Atsuko Sakai

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