必要なものは「自分が必ず実現する」という圧倒的な当事者意識
ゼロイチの事業開発では、想像しなかった壁に必ずぶつかります。それは法律の壁や文化的な壁、ビジネススケールの壁、タイミングの壁、技術的な実現可能性の壁などさまざまです。
壁にぶつかることができればまだ良い方で、壁を想像して前に進むこと自体を躊躇してしまうこともあると思います。前例のないプロダクトを世に出そうとすると、このような「辞めるべき理由」がいくらでも見つかります。そして「辞めるべき理由」はいつだって合理的に思えるのです。
それらの壁を乗り越えるにしろ、迂回するにしろ、前に進む決断をするために必要なものは「当事者意識」です。自分が心の底からその事業を実現したいと思えるか。他のすべてを投げ打ってでもそれに取り組みたいと思えるか。そういう自分自身の強い想いがないと、「辞めるべき理由」を無視することができません。
ここで言う「当事者意識」とは、自分自身が解決したい課題の当事者でなければならないという意味ではありません。課題の当事者自身としてその解決に取り組む場合、当事者であるがゆえに譲れない選択も多く、結果として既存の枠組みの範疇でのアウトプットにまとまってしまうというケースが往々にしてあります。
ラクシュミも自身が生理に悩む女性ではなかったが故に、これまでの文化的背景や習慣に囚われることなく、ドラスティックな解決策を生み出せたのだと思います。
好奇心を持ち続けることですべてが気づきに変わる
そして、事業開発に立ちはだかる壁は思いもよらなかった方法や手段で突破できることがあります。まったく無関係だと思っていたことが実は課題解決の鍵であったり、たまたまイベントで名刺交換をした人がその道のスペシャリストだったりといった風にです。
『パッドマン』でもナプキンを薄く圧縮できずに悩んでいたラクシュミが、ランチ中に冷めたプーリー(揚げパンのようなもので、揚げたては風船のように大きく膨らんでいいます)が小さく萎む様子からヒントを得て、蒸気を使った解決策を思いつきます。
実は、課題解決のチャンスはそこら中に転がっているかも知れないのです。プロジェクトを前に進められるかどうかは、そのチャンスに気付けるかどうかに懸かっています。常に好奇心を持って身の回りの出来事に向き合うことで、日常の中で思い掛けない突破口を発見することができます。
(ソニー・ピクチャーズ提供)
まとめに
・身近な「不」と向き合う
・とりあえず行動を起こしてみる
・諦めないための圧倒的な当事者意識
・好奇心を持ち続ける
これらが私が『パッドマン』を観てあらためて考えた、事業開発に必要な要素です。
「パッドマン」として成功を収めたラクシュミは特別に人より秀でた才能があるわけではなく、人より手先が器用で、心から妻を愛している普通の男性でした。
経験のないことに挑戦する際には「自分に何ができるのか」ということは重要ではなく、「自分は何をすべきか」という本質を考え、その時々に最適だと思う行動を積み重ねていくことで大きな目標を達成できるのです。
映画「パッドマン 5億人の女性を救った男」は現在公開中。