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ゼロイチの創り方を考える

ソニー・ピクチャーズ提供

みなさんは昨年末に日本で公開された映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』をご覧になったでしょうか。

『パッドマン』はインドで安価な生理用ナプキンを開発した発明家・起業家の奮闘を実話を基に描いた作品です。

この物語にはアルナーチャラム・ムルガナンダム氏という実在のモデルがいます。ムルガナンダム氏のストーリーは自身のプレゼン映像や氏を追ったドキュメンタリーが公開されているのでそれらをご確認ください。


アルナーチャラム・ムルガナンダム氏(D Dipasupil/FilmMagic)

ここでは私が自身の事業開発経験から考えた、『パッドマン』に描かれている「事業開発をする上で欠かせない重要な要素」を整理したいと思います。

事業開発者としての共感

私は現在、株式会社リクルートライフスタイルで新規事業を検討する部署に所属しています。そこでスマートフォンで精子の濃度と運動率を測定できるサービス『Seem(シーム)』を立ち上げ、現在はその事業責任者を務めています。『Seem』は「妊活における男性の不在」という社会課題を解決するために開発したサービスで、「自宅で手軽に精子の状態をセルフチェックできる」という価値を提供しています。

『Seem』の構想を練っていた時、スマートフォンで精子の状態を測定するためのレンズは世の中のどこを探しても見当たりませんでした。そのため顕微鏡レンズの開発から始めないとなりませんでしたが、使いものになるレンズは一朝一夕には完成しません。プロトタイプを作っては改善点を洗い出し、次のプロトタイプのためにフィードバックを行うというトライアンドエラーを繰り返しました。

『パッドマン』の主人公ラクシュミは身体を張って生理用ナプキンのプロトタイプを検証します。『Seem』のレンズ開発も同様で、自分自身で検証を行わないといけませんでした。『Seem』の撮影対象は人間の「精子」です。

リクルートというメディア・広告の企業の中で精子観察用のレンズの試作を続ける過程は不安と孤独との戦いでもありました。そのような経験から、周りから「変人」扱いされながらも自分の情熱に突き動かされるラクシュミの姿勢に強い共感を覚えました。


(ソニー・ピクチャーズ提供)

きっかけは身近な「不」

『パッドマン』はラクシュミが最愛の妻のために安全で安価な生理用ナプキンを開発するストーリーです。インドでは経血の処理に汚れた布や草、灰を使うこともあり、それが原因で感染症にかかり、命を落としたり不妊になってしまったりする女性も少なくありませんでした。

妻が古布で経血の処理をしていることを知ったラクシュミは妻のために市販のナプキンを買ってきます。しかし、彼の妻は高価なナプキンを使うことを拒み、汚れた古布を使い続けます。このままでは最愛の妻が病気になってしまうのではないか──。心配したラクシュミは妻が気兼ねなくナプキンを使えるよう、安価なナプキンの開発に乗り出します。

わからないことは試してみるしかない

当然ながら男性のラクシュミには生理がありません。しかし、彼は製品の検証のために自分でナプキンのプロトタイプを着けて使用試験を行いました。試験が失敗すれば街中で血を垂れ流すことになってしまい、ラクシュミ個人にとっては社会的に大きなリスクですし、検証する方法はこれ以外にもあったかも知れません。

しかし、プロジェクトを一歩でも前に進めるためには、考えつく中でベストと思える方法でトライしてみるしかないのです。仮説を並べているだけでは、選択肢が拡がるばかりでゴールへの道筋は明確にはなりません。一歩踏み出せば、たとえそれが間違った方向だったとしても一歩進んだ分の学びが得られ、視界が開けます。そうして一歩ずつゴールに近づくことができます。

文=入澤 諒

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