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2019.02.01 07:30

「想定外をなくしたい」電池レスの時代の振動発電・蓄電技術とは?

IMPACT BATTERY(R)

100円ライターやガスコンロの点火などに使われる「圧電セラミックス」をコア技術に置き、公共性の高い事業に応用した開発を手掛けるセラテックエンジニアリング。半世紀以上前から続く圧電技術を継承し、「電池レス」の振動発電・蓄電を強みに省エネ時代を生き抜く戦略を仕掛ける。シンプルな技術を応用する社長の経営哲学を探った。


「Simple is best。うちの技術はレコード針の技術と変わらないんだ」。東京都あきる野市の本社工場に隣接する事務所の社長室には、壁沿いに圧電技術を使った開発品がずらりと並ぶ。セラテックエンジニアリングの代表取締役社長・岡本正昭は、それらを次々と手に取り、熱心に説明し始めた。
 
圧電セラミックスは、外力を加えたり振動を与えたりすると電気が発生し、逆に電圧を加えると振動や歪みが発生するふたつの可逆特性を持つ。同社は、自然界のあらゆる振動を電気エネルギーに変換するシステムを「IMPACT BATTERY(R)」と名付け、商標登録をしている。

強みは「電池レスセンサー」「メンテナンスフリー」「ローコスト」の3点。電池が不要で耐用年数は10年。安価のためメンテナンスも容易だ。用途は防災や福祉、環境など公共性の高い分野の開発が多い。

国内では1964年の東京オリンピックに合わせて、社会インフラが一斉に整備された。その多くが耐用年数とされる50年を過ぎ、補修や補強が必要な時期を迎えている。東京都はトンネルなど重要な道路施設に対して5年に一度点検を行っており、計画的に補修することで予防保全型の管理を進めている。

そこで同社はトンネルや橋梁などに圧電セラミックスのセンサーを設置し、異常を検知するモニタリングシステムを提案した。振動の波形データをサーバーに保管。ダウンロードができ、緊急時には警報メールが届く仕組みだ。2018年度中に都内の吹上トンネルで初めて実証実験を行う。
 
岡本は取材中、「想定外や非常事態をなくしたい」と、何度も口にした。川崎市や法政大などと連携して、高齢者の介護や見守りに応用したシステムを開発した例もある。ベッドの脚下に圧電センサーを設置すれば、睡眠時の心拍や離床などの生体情報を無線で送信し、離れた場所で把握できる。異常があればすぐに対応可能だ。
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文=督 あかり 写真=岩沢 蘭

この記事は 「Forbes JAPAN 世界を変えるデザイナー39」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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