ヨーロッパで感じた「武道文化」の違い 日本にあるもの・ないものは何?

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全体のために意見を言い合う

最後は、オランダ剣道で素敵だなと思うことを紹介したい。オランダでは、稽古が終わった後に集まって意見を言い合うことがある。その日の稽古で、感じたこと・もっとこうしたい、ということがあったら段位に関係なく意見を出し合うのだ。

ある日の議論は、「より良い稽古をしたいから、もっとこんなことがしたい」といった内容だった。まとめ役はオランダ人の七段の先生で、先生自身も意見を出すが、ファシリテーターをつとめている印象だった。メンバーたちの意見をまとめ、ブラッシュアップしていく。マシンガントークでみんな意見を言いまくったが、たった10分で議論は収束した。

日本だとなかなかこうはいかない。先生の言うことが基本的には絶対だし、意見を言う際は、かなり慎重に言葉を選ぶ。それが日本人の良いところなのだが、オランダの風通しの良い、フラットな環境はとても意見を出しやすい。この場面を目撃した時、日本の「礼」の精神を受け継ぎつつ、その国らしい剣道を作っているのだなと感じた。


オランダは昔から水害に悩まされてきた国だった。災害に素早く対応するために、意見を言い合う文化ができたそう(写真:著者撮影)

ちょっとした場面から、その国らしさみたいなものを感じる。例えば、ドイツ人は試合や合同稽古の後に、集まって律儀に素振りをしている。隣国に稽古に行く機会もあったが、稽古の終わりは必ず拍手で締められる。これがとても良いのだ。「お互い、頑張ったね!」と褒めあうような行為で心地良い。

私たちの国で親しまれている剣道という文化が、ヨーロッパに飛び出し、また新たな文化を発生させている。きっとそこからは、学ぶことも増えていくのではないだろうか。

文・写真=佐藤まりこ

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