ビジネス

2019.02.01

Gmailの発想を生んだグーグルの社食に「カウンター席がない」理由

株式会社ノンピ取締役 荒井 茂太


世界最強の料理は、母のスペアリブ

グーグルでは「世界の料理」「母ちゃんの料理」、そして「日本の郷土料理」という3つのコンセプトでやっていました。

「世界の料理」で心がけたのは「媚びない」こと。カフェテリアの出口にアンケート用紙を置いておいて、要望を書いて箱に入れてもらっていたんですが、私からの回答は「生協の白石さん」みたいに手書きで食堂内の壁に貼っていました。

ある日、そのアンケート箱に、「カレーが辛すぎる」と書かれた紙が入っていました。僕は「今のが本当のインドのカレーの辛さだから、ご要望にはお答えできません。だって、海外で外国人用に味つけを変えた和食を食べると、残念な気持ちになりませんか?」と書いて貼りました。

逆に、東京に出張で来ていたインドの人が僕のことを見て遠くからバーっと走ってきて、「カレーがものすごくおいしかった、まさか日本でこんなにおいしいカレーが食べられるなんて……。正直、うちの奥さんの作るカレーよりおいしい!」って言ってくれたこともあります。

そして、「母ちゃんの料理」。やっぱり世界最強なのは、お母さんの味です。僕の場合はそれはスペアリブなんですが。

お母さんたちは、この子はニンジンが嫌いだから細かく切って入れてあげようかとか、自然なサービス精神で調理をする。これは愛情に満ち溢れているから。だから美味しい。それと同じサービスを、ビジネスアスリートたちにできないか。オフィスの生産性が上がる最適な食のサービスを提供できないかを考えたし、今も考えています。

社食であれば、同じ人が何度も食べに来るので、愛情を込めた「母のサービス」はしやすいですね。


Source: Google

3つ目の「日本の郷土料理」について。和食には数千年の歴史があるんです。また、2013年に和食がユネスコ世界文化遺産に選ばれた理由のひとつに、「家族や地域の絆を深めてきたこと」がありました。それを聞いたときに、職場に「家族の団欒」や伝統行事で地域の人たちが交わすようなコミュニケーションを持ち込めれば、イノベーティブな発想が生まれるに違いない、と思いました。

実は、海外に5万店舗ある日本食レストランで、日本人が関与しているのはなんとわずか10%程度なんです。グーグルで「辛い」と言われたインドのカレーではないですが、正しい和食の味、団欒の文化を世界に輸出して行きたいですね。まさに「和食文化を世界に」です。

ノンピでは「ケータリング」という場所や時間に制限されない事業モデルで、食を通じたコミュニケーションが生まれる場をお届けしたい。それこそ24時間365日、全国津々浦々、いえ、世界中にどこでも食を通じたコミュニケーションの場を提供したいんです。たとえば、ドローンを使って、富士山山頂にも届けるとか。

セントラルキッチンを持っている弊社ノンピは「マーケットプレイス」ではなく「ブランド」を目指しています。つまり、出前館やウーバーイーツのような店舗やレストランの集合体ではなく、フード業界にはまだない、アパレルでいう、ZARAやユニクロのようなブランドを想定しているんです。

また、私たちのサービスに関わるすべての人に、正しい価値や「想像以上」を届けるため、AIやロボティクスといった最先端技術を導入し、生産性や効率性を高めたいと考えています。劣化しないお刺身も、3Dフリーザーを使えばできるんですよ。


荒井 茂太◎大学卒業後、25歳で大怪我を負い、サッカー選手を断念。27歳でバリスタに。2007年10月、グーグル・ジャパンフードマネジャーとしてフードチームを立ち上げ、2016年10月までの9年間、東京フードチームをリードする。2016年11月、株式会社ノンピに参画。取締役兼コントラクト事業部長として、三菱地所、GSK、LINEなどの社食の企画運営を務める。現在、社食に止まらず、食育・コミュニティ活性という観点から色々なプロジェクトに邁進する。

文=石井節子

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