退職後の生活に関する意外な3つの事実

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寒さを振り払って配車サービス「リフト」の車に乗り込んだ私は、運転手アレックスと会話を始めた。アレックスと妻のリーは、いつかの日か退職することを頭に数十年、勤務を続けた。

2人は退職後に旅行をしたり、孫たちと時間を過ごしたり、テニスをしたりする夢を分かち合っていた。退職はこれまで働いてきたことへの報酬であり、働きながら子どもを育てていたときにはできなかったことを全て実現するチャンスだった。

アレックスとリーは、退職後の生活を計画する多くの人と同様、節約し、投資し、計画を立てていれば、やることリストや余暇の生活が無限に待っているという「退職ストーリー」を信じていた。唯一すべきことは、無限に存在する家族とのイベントや趣味、旅先から望むものを選ぶことだと思っていた。

この支配的な退職ストーリーは強力なものだ。多くの人は、報酬と余暇をモチベーションとして貯蓄し、退職後の計画を立て、キャリアを終える。しかし、働いた後に報酬をもらうという退職ストーリーはそれだけでは不完全だ。このストーリーでは、退職まではこぎ着けても、退職後をどう過ごすかについてはほとんど指示がないからだ。

アレックスとリーのように、退職後の実際の生活が自分たちの予想していたものと驚くほど異なることに気づく人は多い。ここでは、退職後の生活に関する意外な事実で、ほとんどの人が予想していない3つのことを紹介する。

1. 退職後も働く人が多い

アレックスは退職から1年足らずで、家に関する作業を全て終えてしまった。「ペンキを塗る部屋の数やガレージの整理をする回数は限られている」とアレックス。さらに妻のリーは、退職後間もなく教会事務所でボランティアを始めた。アレックスは購買責任者としての以前の仕事に戻りたいと思わなったが、毎日24時間家にいられるわけでもなく、週2、3日リフトの運転手になることにした。

退職後の生活を示すパンフレットには、毎日浜辺を歩いたり自転車に乗ったりする姿が描かれているが、多くの人は退職後も働き続ける。

全米退職者協会(AARP)の報告によると、非常に多くの人が退職後も働いている。米雇用情報サイト、キャリアビルダー(CarrerBuilder)の調べによると、60歳以上の米国人の実に20%は、自分がいつか退職するとは考えていない。退職後も働き続けることは、収入を補う手段であることが多いが、1日の予定を立て、ただ家の外に出るきっかけにもなる。

2. 退職後の時間は長い

アレックスとリーが退職から3年で旅したのは2回だけ。成人した子どもたちは忙しいキャリアと小さな子どもたちの世話の両立に奮闘し、祖父母の訪問に割ける時間は非常に限られていた。孫に会うのはクリスマスを含め、年にたった数回だ。
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翻訳・編集=出田静

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