ビジネス

2019.02.07

強い会社はカリスマに頼らない。全員が「今」に意味を見出せる共同幻想を作れるか

Jacob Lund / Shutterstock.com

人と人とを「線」で繋ぐとき、二人ではその線は1本にしかならない。4人集まるとそれは6本になり、100人集まると組み合わせの数は4950本になる。

人はそれぞれ好き嫌いや相性があり、関係する「線」は複雑になる。あなたの会社が1000人の会社なら、49万9500通りの人間模様が描かれたドラマがある。そのままでは会社は漂流する。経営者が強い求心力を持ち、一人一人を束ねる方向性を打ち出せれば1000人の関係は1000で収束する。
 
会社が一つになるためには、この求心力を発揮できる経営者の存在が極めて重要である。しかし、カリスマ性を個人に求めるだけの会社は永続性がない。組織を一つのベクトルに向かわせるためには、ある種の「共同幻想」が必要となる。

それを過去に求めるなら、会社の歩んできた道に意味付けし理念を創り出すこと。未来に求めるのであれば、魅力的な未来のビジョンを打ち出すことである。

しかし、変えられない過去と不確実な未来を求心力とする経営はリスクがある。もう一つの道として、全員が「今」に意味を見出せる会社を作ることを考えたい。

全員がうまくいく日もそうでなかった日も、毎日寝る時に明日も頑張ろうと思える会社。偉い人もそうでない人も、中心的な人も支える人も、今にベストを尽くそうと思う会社。これは、ビジョンや過去の社史に意味を求めるのではなく、働くこと自体に意味を見出せる会社である。

別の言い方をすると、多様性の強さを創り出せる会社である。全員がスティーブ・ジョブズのようになれるわけではないし、出世できるわけでもない。

しかし、全員が毎日自分の仕事に誇りをもってベストを尽くせる会社を作ることができれば、それは他にない組織としての希少性を持ち、事業環境に左右されない強い企業価値を生み出すのではないか。その会社は経営者が変わっても、事業環境が変化してもしぶとく存続し続ける会社になるからだ。

そういう共同幻想を求心力にできる会社が出来れば、株主にも顧客にも従業員にも価値を生み出し、たくさんの賛同者が集められるのではないか。

未来が見えにくくなり、仕事も自由に選べる社会に変化していく中で、会社の存在に新しいパラダイムが求められている。カリスマを求める時代になる中で、カリスマの脆弱さも露呈し始めている。

これからは仕事が一人一人にもたらす人生の充実感に焦点を当てる経営が求められる。あなたが社長でなくても自分の課や部でそういう組織を作ることを試してみてほしい。そうすれば何者にも代えがたい、非常に強固なチームができるはずだ。

文=大庭史裕

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