ビジネス

2019.01.31

大阪万博プレゼンターの建築家が語る「2025年は日本再起のラストチャンスだ」

Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images


大阪万博は日本再起のラストチャンス

私にとって建築プロジェクトも都市デザインも、出力先が違うだけで本質は同じ。いま「都市」に注目が集まっているのは、多くの情報系企業が出力先のプラットフォームとして物理空間と連動する必要に気づいてきているからです。大阪万博は、そんな新たな都市の形をデザインできる大きなチャンスです。

グーグルに始まり、アマゾンを経て近年流行っているウーバーやAirbnbまで、ウェブ上のプラットフォームと、都市にある物理的なモノの掛け合わせは強まっています。その流れにあるのがスマートシティ。つまり現実世界における情報プラットフォームですが、まだ都市をそう扱えた事例はありません。

いまはGAFAをはじめとした世界のプラットフォーマーたちが、こぞってモノとの関わり方を考えています。一方で、彼らはモノの扱いが予想以上に難しいことにも気づき始めています。日本のものづくり企業は1980年代まで世界トップクラスで、ものづくりのノウハウをたくさんもっている。情報系との共通言語さえ備えれば、日本企業も群としてプラットフォーマーとして返り咲くチャンスがあります。

大阪万博はそうした領域横断的な技術開発と実証実験の場にすべきだと私は考えています。せっかく、デジタル世界と物理世界が連動した形で都市をつくれるのだから、大企業が新たなテクノロジーを積極的に取り入れて、実際にユーザーに体験してもらう。パビリオンやシンボルタワーが主役の20世紀型万博ではなく、実地でないと難しいスマートシティ実装の一大実験場という新しい価値を最大限に生かすべきです。

いまの日本が抱える最も深刻な課題は、領域を越えた投資の動きが全くできていないことです。国全体が伸びていた昭和という特殊な成功体験をそろそろ脱して、未来を見据えた活動をいい加減に始めたいですよね。

私自身も、安藤忠雄建築研究所で徹底的なものづくりの基礎を学んでいます。その後異なるアプローチでの手法を求めて、コロンビア大学の修士課程に入り直しました。この組み合わせが、より実効的なコンピュテーショナルデザインの実装に繋がっているとすれば、それ自体示唆的な気がします。

過去の成功体験にこだわらず、領域を横断できる若者が指揮をとること。2025年は、新しい価値創造の機会をデザインするという意味でも、とても重要な機会なのです。



豊田啓介◎東京大学工学部建築学科卒業。2002年コロンビア大学建築学部修士課程修了。東京と台北をベースに建築デザイン事務所noizと都市×テックのコンサルタントgluonを共同主宰。

構成=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 世界を変えるデザイナー39」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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