ジョゼフ・B・フラーとマンジャリ・ラーマンの同報告書によると、企業は多くの場合、従業員が担っている介護・育児や、こうした責任が生産性にもたらす影響を認識していない。従業員の育児や介護を支援するため福利厚生を提供する企業は多いが、こうした支援は従業員のニーズを満たせていないことが多く、役に立たない福利厚生に数百万ドルもの資金が費やされてしまっている。
ニーズと福利厚生のずれ
調査対象となった企業の65%はフレックスタイム制を提供していたが、こうした制度を利用していた従業員はたった39%だった。また、無給休暇を提供していた企業は55%だったが、この制度を活用していた従業員はわずか19%にとどまった。
それとは対照的に、従業員の20%は職場の高齢者介護サービスを望んでいたが、このサービスを提供していたのはわずか9%だった。また、従業員の29%は高齢者介護サービスへの助成金を希望していたが、これを満たしていた企業はたったの8%だった。
同調査では、従業員にどのような福利厚生が最も重要だと感じるかも尋ねた。上位に挙がったのは介護者紹介サービスや有給休暇、フレックスタイム制だった。逆に人気がなかったのは無給休暇、介護の授業、任意の労働時間短縮だ。
企業が提供していた中で、育児や介護をしている従業員のニーズと合致していた唯一の福利厚生は有給休暇だった。調査対象となった企業の59%は有給休暇を提供し、育児・介護を行う従業員の55%が活用していた。この調査結果には、有給家族休暇法案を議論しながらも概して行動に移してこなかった、米国の州・連邦政府の政策立案者へのメッセージが込められているかもしれない。
認識のギャップ
雇用主と、育児や介護をしている労働者との間にはどれくらい認識のズレがあるのだろう? 調査対象企業の半分以上は、介護や育児が従業員に与える影響を測ろうともしていない。そのため企業は、介護や育児にどれほど時間がかかるかや、従業員にかかる感情的・身体的な負担を全く理解していない。
結果として、介護や育児が仕事に与えるマイナスの影響について、雇用主と従業員の間には大きな認識の差が生じていた。雇用主の間で家族の介護や育児が従業員のパフォーマンスを下げると考えていたのはわずか4分の1だったのに比べ、従業員の80%は介護や育児により自身の生産性が下がることを認めていた。仕事に集中できていないことを従業員がうまく隠しているのか、それとも上司が注意を払っていないかのどちらかだ。