ビジネス

2019.01.29

わかりやすさより面白さ 上海・復興公園の「株情報会」で思うこと


同じことは「日本人はあんなに勉強しているのに英語が下手」にも通じるような気がする。文法から入り、退屈な会話を暗記させられ、面白くもないエッセーを読まされる。リスニングだといえば修行僧のように繰り返し聞かされる。「勉強感」が強すぎるのだ。

上海のおじさん、おばさん流の現実的なやり方の方が、投資教育でも語学教育でも王道なのかもしれない。

傍らを歩く劉君も、日本語は語学学校よりも、バイト先の日本人女性を口説くことで上達としたと自慢する。

「ところで、今度、僕の会社をアメリカで上場させようと思うんです。プライベート・エクイティのIPOみたいなスキームなんですよ」。特別目的買収会社(SPAC)という方法だ。買収専門の特別会社を設立し、投資家から資金を募って上場させる。実際に買収を実行するまでは、投資家のおカネの大半は信託しておく。

30年余り前に、アメリカの店頭市場で自然発生的に登場した頃には、詐欺的な取引を引き起こし、監督当局や取引所は否定的だった。だが、急速なルール整備も奏功し、現在ではナスダック市場やニューヨーク取引所で盛んに行われている。昨年のアメリカ市場におけるIPOの約2割がSPACである。

日本ではSPACダメ。日本以上に不自由な中国市場だから、中国人は太平洋を越えて米国でSPACをやっている。必要は発明の母、なのだ。「社会主義市場経済」とは何なのだろうか。

ふと、復興公園の「株情報会」の一群から視線を上げてみた。二体の巨大な石像が彼らを見下ろしている。マルクスとエンゲルスであった。


川村雄介◎1953年、神奈川県生まれ。大和証券入社、シンジケート部長などを経て長崎大学経済学部教授に。現職は大和総研副理事長。クールジャパン機構社外取締役、南開大学客員教授を兼務。政府審議会委員も多数兼任。『最新 証券市場』など著書多数。

文=川村雄介

この記事は 「Forbes JAPAN 世界を変えるデザイナー39」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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