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2019.01.28

デザイナー創業者独占インタビュー!エアビーの「アマゾン化計画」とは何か

(左から)ネイサン・ブレチャージク、ブライアン・チェスキー、ジョー・ゲビア



2016年11月17日、ロサンゼルスで開かれたイベントで、ブライアン・チェスキーはAirbnbの新たなプラットフォーム「トリップ」を発表した。トリップにはすでにAirbnbが展開してきた宿泊サービスのほか、「体験(エクスペリエンス)」などの項目が加えられた

Airbnbは「体験」で初めて本格的な事業拡大に乗り出した。極めて細分化されたガイドツアーの市場に参入したのだ。「エッツィ」がハンドメイド作品をeコマースの商材に変え、「ウーバー」が車を持つすべての人々をお抱え運転手に変えたように、「体験」は料理人からヨガの行者に至るまであらゆる人々に、ネットを利用したツアービジネスをさせるつもりだ。

ツアーガイドを精査する必要性から「体験」の成長は遅れたが、18年になって加速している。2年前に12都市の500件のツアーから発足した「体験」は、今や世界800都市で1万5000件を実施するまでに拡大。Airbnbの取り分は個々の予約料金の20%で、17年はおよそ200万ドル売り上げを増加させた。

17年12月、チェスキーは共同創業者たちを集めてブレインストーミングを行った。金銭的な評価基準を最重要視しない会社が、今後いかにして意思決定を行っていくかのガイドラインを話し合おうとしたのだ。彼は言う。

「より大きな責任を担うのなら、誰に対して責任を担うのかが問題になる」

大半のCEOにとって、しかも上場を予定しているのなら、答えは「投資家」になるはずだ。しかしチェスキーは「大半のCEO」とは違う。Airbnbは投資家だけでなく、従業員、ゲスト、ホスト、都市という他の四者のステークホルダーをも顧慮しつつ、成長を評価していくことになるだろう。彼らはそのことにより、通常とは異なる自社のやりかたが受け入れられやすくなるよう願っている。

たとえばホストに株式を与えたり、低利の改築資金を融資したりすることを、証券取引委員会に認めてほしいのだ。そこにはまた、コミュニティ的なルーツに忠実であり続けたいという願望も反映されている。

しかし、その種のやり方はIPO後には難しくなるかもしれない。Airbnbは永遠に非公開企業にとどまる道を探ってきたが、17年秋にモルガン・スタンレーと協議した後、それはあり得ないと悟った。そこで早ければ19年半ばに株式を公開することにしたのだ。長々と先延ばしすることはできない。20年には従業員に付与したストックオプションの多くが行使期限を迎えるからだ。

上場について尋ねると、チェスキーは気難しげな顔になる。彼は、企業は往々にして大局観を見失い、四半期のリズムに振り回されがちになると話す。「問題は、そもそも自分たちが山に登っているのだということを忘れてしまう人々がいることだね」と、チェスキーは語る。

「彼らは口では『大衆の利益に奉じたい』とか『世界に役立つプロダクトを作りたい』などと言うが、取締役会での唯一の評価基準は、そのプロダクトのセールスに関わる基準だけなんだ」

上場を前にした企業のCEOとしては異例の発言だ。Airbnbはゲームのルールを自ら作りたがっている。だが、彼らにプレーする準備ができているかどうかは、投資家たちの判断次第だ。


ブライアン・チェスキー◎Airbnbの共同創業者兼CEO。1981年、ニューヨーク生まれ。ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン卒業。元インダストリアルデザイナーで、元ボディビルダー。

ジョー・ゲビア◎Airbnbの共同創業者兼CPO。1981年、アトランタ出身。ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン卒業。Airbnb専属のデザイン・イノベーションスタジオSamaraを指揮する。

ネイサン・ブレチャージク◎Airbnbの共同創業者兼CSO、Airbnbチャイナ会長。1983年生まれ。高校時代、スパム対策ビジネスで成功。ハーバード大学でコンピュータ科学の学位を取得。

文=ビズ・カーソン 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=町田敦夫

この記事は 「Forbes JAPAN 世界を変えるデザイナー39」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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