でも、ここ7カ月間はまるで厄払いをしたかのように、トヨタは世界のステージで目を疑うような素晴らしい結果を記録している。まずは、念願のルマンに優勝した。さらに、ワールド・ラリー選手権でも優勝、世界一過酷なラリーと言われているダカール・ラリーでも初優勝を飾った。
アメリカでも、トヨタは勝利を味わった。NASCARキャンピング・ワールド・トラック選手権で優勝、USACナショナル・ミジェット選手権のタイトルも見事に獲得した。日本のスーパー・フォーミュラ選手権では、トヨタが2014年から4年連続でタイトルを獲得している。昨年は惜しくも勝利を逃したけどね。
こういう圧倒的な結果を残すと、海外、特にモータースポーツの本場と呼ばれるイギリスのメディアは騒ぎ出す。オートカー誌、オートスポーツ誌、さらにロイター通信などの有力メディアが「ついにトヨタがルマンで勝利」とか「トヨタが過酷なダカールラリーに初優勝!」などと大きく取り上げた。
また「IOL」という南アフリカの有力誌が「南ア組み立てハイラックスがダカール・ラリーに優勝!」と誇らかにトップページで伝えている。
一方、アメリカの名門カー&ドライバー誌は、トヨタのNASCARの勝利をビッグニュースとして報道し、同時に「2019年には新スープラが、カムリの代わりにNASCARに挑む」とかなり市場を盛り上げている。いうまでもなく、アメリカはスープラのメインマーケットだ。
2019年に、米国のNASCARに初参戦する新スープラ
でも、僕から見ると、その「盛り上がり」こそが重要な言葉だと思う。イギリス、南アフリカ、アメリカでは、トヨタの素晴らしいレース結果を大きく伝え、熱い盛り上がりを見せているのに対して、なぜか日本では全然盛り上がらない。
まずは、これほど多くの勝利を飾ることができた要因として、モータースポーツ好きな豊田章男社長の熱意とサポートは称賛されるべきだと思う。社長本人も、ドイツ・ニュルブルクリンク24時間レースに参戦したこともあれば、日本国内でラリー選手権にもエントリーしてきている。
しかし、それより重要なのは、「Gazoo Racing」というトヨタのレース部門だろう。ワールド・ラリー選手権やダカール・ラリーに優勝ができた主な理由は、日本のGazoo Racingが欧州の優秀なドライバーを招き、現地のモータースポーツ専門家と見事に組んで、彼らと共同開発でレースマシンを作っているからだ。