労働者は、50歳以降に離職を余儀なくされた場合に備えよう

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非営利報道組織「プロパブリカ」と、シンクタンク「アーバン・インスティテュート」は2018年12月、従業員に対する年齢差別がいかに長期的な影響を及ぼすかという点について、驚くべき結果をまとめたレポートを公表した。

職場では長年、年齢差別がごく一般的に行われてきた。しかしここ最近、そうした慣例が、従業員の退職金積み立てや貯蓄にいかに深刻な影響を与えるかという点に関心が集まっており、研究調査が行われるようになっている。

解雇されたり、本人の意思によらずに雇用が中断されたりすると、たいていは、退職金の積み立てに長期的な影響が及ぶ。たとえ新たに仕事を見つけることができた場合でも、それは変わらない。

2018年12月に公表された前述のレポートでは、約2万人を調査対象として、1992年からデータ収集を開始した。調査対象者が50歳を迎えた時点以降のデータを収集・分析したのだ。

従業員が50歳に達して調査対象になったときから、仕事を辞めるまでのあいだについて、レポートにはこう記されている。

「(50歳から退職時までの)経済的に悪影響を受けやすい時期に、全体の56%が、少なくとも1度は解雇されたか、仕事を辞めた経験があることがわかった。彼らは、自ら辞めたというよりは、辞めさせられた可能性が高い」

重要なのは、こうした人々の90%がその後、給与水準を離職前と同じレベルに戻せなかった点だ。レポートによれば、「長年が経っても、離職経験者の半数以上の世帯収入は、離職したことのない人たちの世帯収入を大幅に下回っていた」という。

アメリカでは、連邦法「雇用における年齢差別禁止法(ADEA)」、ならびにそれと関連する州法があり、高齢の労働者に対する差別を禁止している。採用を決める際に意図的な年齢差別があったと考えられる場合は、被雇用者側は、自分の申し立てを立証するための「明白な証拠」として、以下のことを提示しなくてはならない。

・自分はプロテクテッド・クラス(Protected Class:法律上、差別してはならないと保護されている集団)に属していること。

・自分は雇用主が求人していた仕事に応募しており、適任者であること。

・適任者であるにもかかわらず、雇用を拒否されたこと。

・自分が雇用を拒否されたあとも、そのポストはまだ空いており、雇用主は、自分と同様の能力を持つ別の応募者を探していること。

次に、被告である雇用主は、不採用の決定が正当であったという根拠を示さなくてはならない。それに応じて、申し立てを行った被雇用者側は、被告が正当だとした根拠は本当の根拠ではなく、差別するための口実に過ぎないことを、証拠の優越性によって証明することになる。

アメリカ雇用機会均等委員会(EEOC)が受理する、差別に関する告発5件のうちおよそ1件は、年齢差別を訴えるものだ。EEOCには2017年、1万8000件を超える年齢差別の訴えが寄せられた。

被雇用者側が、差別の可能性とその影響についての情報や知識を多く持てば持つほど、より良い資金計画を立て、雇用中に離職せざるを得なくなった場合に備えることができる(もちろん、法的手段に訴える選択肢も含まれる)。こうした準備をしておけばおそらく、退職するまでに何かの問題に遭遇して、不本意ながら離職する事態になっても、その金銭的影響を軽減させることができるだろう。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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