海の不審船を発見する「衛星スタートアップ」2社の取り組み

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フィンランドの衛星スタートアップ「ICEYE(アイサイ)」と、サンフランシスコに本拠を置く衛星スタートアップ「Spire」は1月22日、公海上の違法漁業や海賊行為を共同で追跡し、政府やNGOによる取り締まりを支援する取り組みを開始すると発表した。

両社の創業者は、フォーブスが毎年発表している「30アンダー30」に選出されていた。

両社が提供するのは、AISが追跡可能な信号を発していない「ダーク・ベッセル(黒い船舶)」を検知するサービスだ。AISとは、政府や交通管理システムが航行中の船舶の位置をリアルタイムで追跡するために使われているシステムだ。

Spireは、AIS信号を使って船舶を追跡するサービスを既に提供しているが、顧客からダーク・ベッセルの追跡を求める声が多く上がっていたという。

「顧客や政府とディスカッションをする中で、ダーク・ベッセルの検知に対する要望が多く出た」とSpireでプロダクトマーケティングの責任者を務めるIain Goodridgeは話す。船舶が違法行為を働く場合、直前にAISを切ることが多い。ダーク・ベッセルが行う違法行為には、違法漁業や廃棄物の投棄、密輸、海賊行為などが含まれる。

ICEYEの衛星は、カメラやスペクトロスコープではなく、SAR(合成開口レーダー)による画像を提供している。SARはレーダーの一種で、高解像度の2次元・3次元画像を作成することができる。SARは他の衛星画像と異なり、雲を透過して撮影ができるため、船舶の追跡に適している。

ICEYEの共同創業者のPekka Laurilaによると、両社の衛星を組み合わせることはダーク・ベッセルを追跡する上で最適なパートナーシップだという。

「我々はSpireの提供サービスを理解しており、相互に補完的な機能を提供できると考えている」とLaurilaは話す。2社は今後、ダーク・ベッセルを検知するために2つのサービスを提供する。1つは、顧客が監視したい海域と時間帯を指定し、ICEYEの衛星が捉えた船舶とSpireが検知したAIS信号を照らし合わせ、AIS信号を発信していない船舶を捜査対象とするものだ。

2つ目のサービスは、顧客が監視したい海域でAIS信号を切った船舶を検知すると、Spireが顧客に通達し、当局に捜査する海域を知らせるためにICEYEが船舶を追跡し続けるというものだ。

これまでにもダーク・ベッセルを追跡するサービスは存在したが、SpireとICEYEによるコラボレーションは既存のサービスよりも効果的だ。Spireは数十基もの衛星を保有し、ICEYEも最近SAR衛星を2基追加した。

「これまで、ダーク・ベッセルを発見できても、追跡することはできなかった。また、衛星の数が少なかったために、飛行する合間を縫って違法行為をすることができた。しかし、これからは検知する回数が増え、抑止効果を発揮できると期待している」とLaurilaは語った。

編集=上田裕資

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