「ROMA/ローマ」は、すでに、昨年の第75回ヴェネツィア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞するなど、各映画賞で軒並み作品賞や監督賞に輝いており、今回のアカデミー賞でも、ヨルゴス・ランティモス監督の「女王陛下のお気に入り」と並んで、両部門での最有力作品として、下馬評に上っている。
もし、作品賞を受賞すれば、キュアロン監督としては初の受賞となるが、監督賞なら、2013年の「ゼロ・グラビティ」に次ぐ2度目。また、監督賞を受賞することになれば、昨年このコラムで触れたように、2014年「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」と2015年の「レヴェナント: 蘇えりし者」のアレハンドロ・イニャリトゥ監督、2017年「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督と、この6年間で5回目のメキシコ人監督の受賞となる。
ちなみに、この3人はメキシコ時代の2007年に「チャチャチャ・フィルム」という映画製作会社を共同で立ち上げており、いわばともに映画製作を志した盟友だ。この6年間、2016年「ラ・ラ・ランド」のデミアン・チャゼルを除けば、この3人で監督賞をたらい回しにしていることになる。
映画界の構造を変える作品
さて、キュアロン監督の「ROMA/ローマ」だが、それ以外に特筆すべきことがある。それは、この作品がネットフリックス配信の作品だということだ。
作品は11月23日から、アメリカの一部の映画館で劇場公開されたが、それから1カ月もたたない12月14日からネット配信されている。ちなみに日本では、10月の東京国際映画祭で特別招待作品として上映された後、劇場公開を経ずに、ネットフリックスで配信された。
ネット配信の作品がアカデミー賞の作品賞を受賞すれば、もちろん初の快挙となる。とは言っても、ネット配信の作品については、劇場側から当然の如く反発があり、以前、同じくネットフリックスの作品である「オクジャ/okja」と「マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)」が第70回のカンヌ国際映画祭に出品されたときも、劇場公開を経ない作品は受賞すべきではないと、喧々囂々の議論となった。