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繊維・ファッション業界の課題と未来へのイノベーション


2つ目の理由が、移り変わりやすいファッショントレンドだ。ファッション業界は、他の産業と比較して圧倒的に消費トレンドのスピードが速い。もちろん数年間続くビッグトレンドもあるが、市場では、顧客のニーズに沿った商品を随時提供するため、毎月のように展示会を開催し、毎年新商品を数百型も発表し続けるメーカーも少なくない。

また、展示会で受注した商品を最短納期で店頭に陳列するために、前シーズンの売れ筋や欧米のトレンドから予測し、「これは注文が多くつくはず」というものは見込みで少し多めに生産しておくのである。

ところがこれも、常にトレンドが的中するわけでも、予測通りに売れるわけではない。需要を読み違えて生産した商品は過剰在庫となっていく。

その「色ぶれ」に消費者は気づくのか?

最後に上げられる理由は、高すぎる品質基準だろう。ファッション業界は川下であるデベロッパーから川上であるメーカーに至るまで、業界全体としてクレーム回避のための品質への意識が高く、基準も厳しくなっている。それを満たさない商品は不良品(B品)として扱われ、一部はアウトレット等で販売されることもあるが、多くは世の中に流通することはない。

どのような基準で不良品と見なされているかというと、基本的には納品先の基準に沿う形になるのだが、納品先ではない商品の品質を検査する「第三者機関」もいくつか存在し、そこでの検査結果が納品先の基準に満たない場合は、たとえ大量に生産した後であったても納品すら許されない。



それらの商品の多くは廃棄へと向かうが、その中には、「色ぶれ」といって納品先が指定した色と多少の誤差があるだけのもの、「とびこみ」という1mmほどの綿くずのようなものが生地に織り込まれてしまっているだけのものなど、ユーザーである消費者が気にするのか不明なものも多く含まれる。

事実、私が以前働いていた繊維商社で、得意先から不良品として返品されてきた商品の不良カ所を確認した際にも、「どこが不良なの?」と目を疑う事もよくあった。

改善に向け少しずつ…

こうした理由で、あらゆるフェーズで在庫は積み上がっていくのだが、必ずしも悲観的な話ばかりではない。少しずつ業界全体の問題意識は変わりつつあり、そもそも作りすぎを減らすSCM(サプライチェーンマネジメント)を利用した取り組みであったり、作りすぎたものをうまく活用していく取り組みも広がってきている。

フランスのブランド「ヴェトモン(VETEMENTS)」は今年、店頭のショーウィンドーを古着の山で埋めるインスタレーションを実施している。大量生産・大量消費問題への消費者の関心を高めると同時に、ブランド側には、市場を異常なほど飽和させていることや地球に悪影響を与えることに対して罪悪感を抱いてもらうためだという。

同ブランドは17年春夏のファーストコレクションで「リーバイス」のビンテーンジジーンズをリメイクするなど、古く使用されなくなったものに第2の命と新しい用途を与えてきた。

また日本国内でも、セレクトショップ大手のアーバンリサーチが在庫となっている衣服をアップサイクルし、新たに付加価値のある製品として販売するサステナブル・プロダクト・ブランド「commpost(コンポスト)」を立ち上げたと発表している。

業界の構造はそう簡単に変わるものではないが、こうした取り組みから消費者の意識が変わっていき、繊維ファッション業界において「サステナブルである」と思われる取り組みは、これまで以上のスピードで広がっていくだろう。

連載:繊維・ファッション業界の課題と未来へのイノベーション
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文=福屋 剛

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