このプロジェクトで作成した4つのシナリオや技術コンセプトは、リサーチの過程で見えた多様な視点を繋ぎ合わせることによって生まれたものだ。これを見た誰もがコンセプトを疑似体験できるように、象徴的な4人のキャラクターを主人公に立てて展開する4つのストーリーとしている。
ちなみに、主人公のキャラクターを追うと、彼らの行動は今とさほど変わらない。家を出て、移動し、目的地で用事を済ませる。モノを作り、運び、商売をする。しかし、一つ一つのアクティビティはよりシームレスになっている。技術はあくまでもインフラとして、生活の中に溶け込んでいるのだ。
対話から始まる未来
未来の空は、移動のための空間だけでなく、私たちの生活圏の一部となっていくだろう。技術によって日常生活の一つ一つの行動がより快適になれば、私たちの心と時間にゆとりが生まれる。そのゆとりは新しいサービスやビジネスを呼び、毎日をさらに豊かにする。
今回のプロジェクトも、シナリオ内のストーリーを越えて、周囲の人々の生活や働き方まで想像を膨らませることで、より豊かな未来が見えてくるかもしれない。
また、未来を描いていく過程で、ビジョンが変化することもあるだろう。それでも良いと私は思う。大切なのは、周りと対話し、多様な視点を取り入れながら、未来の私たちが活き活きと過ごせる世界を一緒に築いていくことだ。そんな情熱を胸に、通常の業務とは正反対の「答えがないプロセス」に真摯に取り組んでいたJAXAの有志メンバーに、IDEOも強い刺激を受けた。
今回、国の研究開発機構であるJAXAが、技術の垣根を越えて生活者に歩み寄り、より人間中心の未来を描いたことは、日本にとって大きな一歩ではないだろうか。Future Blue Skyをきっかけに、未来の空について、一般市民や民間企業も巻き込みオープンに議論できる場が増えていくことが、私たちの願いだ。
より良い未来は、対話から始まるのである。