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今回のスモール・ジャイアンツの選考では、脱下請けをするだけでなく、顧客を含めて、自社を取り巻く関わり合いのある人たち全員を豊かにする企業が増えてきたと思います」

内田の話は「サービス型ものづくり企業」と言えるもので、単にプロダクトを提供するだけでなく、それを通じてユーザーに価値を提供し、彼らと一緒に成長していく企業だ。それは結果的に、世に大きな影響を与えることにもなる。

あらゆる関係者全員に豊かさを提供する。それには経営手腕が問われる。スモール・ジャイアンツの面白さは、個性豊かな経営者たちの歩み方だ。

倒産寸前だった者もいれば、親の事故や病気、家庭の事情など、突然、経営者になった人たちが多い。しかも経営環境は逆境だ。しかし、ある段階で「覚悟」をしてから試行錯誤と創意工夫を繰り返していく。

こうしたヒューマン・ストーリーに自分の家族や人生を重ね合わせると共感したり応援したりしたくなるのだが、それだけが魅力なのではない。

では、価値をつくるものとは何か。それはメッセージだろう。

7社それぞれにメッセージがあり、そのメッセージが顧客の心理に刺さる。7社に共通したメッセージを見出すならば、それは「共生」だ。

本誌で紹介している木村石鹸工業の例がわかりやすいだろう。「仕事に制約はない」と、従業員に「仕事は楽しむもの」と伝える。経営者と従業員が同じ方向を向き、取引先や消費者とも駆け引きをするのではなく、「パートナー」として同じ方向を向いて協調し合う関係を築こうとしている。

共生のメッセージを感じ取った人々が、昨年12月10日、「スモール・ジャイアンツ アワード 2019」の会場に集まった。200人の会場に参加を希望した人は約500人。当日、開場すると、これから社会に出ていく学生など若い人たちの姿も見られた。

読者とともにグランプリを決定

「これで7社によるプレゼンテーションと質疑応答は終了しました。会場の皆さんは、グランプリにふさわしいと思った1社に、投票してください」

場内にアナウンスが流れ、アドバイザリーボードは審査のため、会議室に移った。会議室で審議・投票を終えた時、会場の
一般投票の結果がもたらされた。

会場も審査員も、得票1位は奇しくも同じだった。ヒルトップである。しかし、残る6社もグランプリと同じくらいの価値があるため、各賞が決まった。木村石鹸工業は地方の事業者のモデルケースになるとして「ローカルヒーロー賞」、どん底から新規事業で甦ったアチハは第二創業を意味する「セカンド・ローンチ賞」、世界を制した高山医療機械製作所に「グローバル賞」、埼玉県から52カ国に展開するインダストリアに「グローカル賞」、ホールディングス化という共生で製造業のあり方を変える由紀精密には「パイオニア賞」だ。

グランプリの授賞式。はからずもヒルトップの山本勇輝は壇上でこう挨拶した。

「私たちは『楽しくなければ仕事じゃない』をキャッチフレーズにしています。仕事はない状態でしたが、なんとなく面白いことができそうだから、アメリカに進出しました。今までアメリカに行ったことすらなかったけど、とりあえず工場を建ててから考えることにしたんです。そんな企業文化のおかげか、若くて優秀な人が就職してくれています」

狂ってるねえ、と会場から笑いが漏れる。小さくても大きな可能性を秘めている─。会場で見られた参加者たちの熱い視線は、まさにそのことを物語っていた。

文=野口直希

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