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それは真の問題解決か

こうした「本当に世に紹介したい企業」を発掘できたのは、アドバイザリーボードの存在にある。目利きであるアドバイザリーボードの日頃の活動からは、「時代の空気」が見えてくる。例えば、中小企業支援で知られる西武信用金庫の落合寛司が口にした「連携」は、のちにキーワードの一つであることを実感した。

まずは落合の話を紹介しよう。

「市場が国内で完結しているうちは、大企業の下請けだけでも仕事が途切れませんでした。しかし、グローバル化が当たり前になったいまでは即納を求められるうえ、海外の安い工場が競争相手になりました。

彼らと戦うために必要なのは、根性論的な努力ではなく、アイデアや工夫に裏打ちされたビジネスモデルです。優秀な人材を囲い込めないなら、外部人材や外部の資源と連携していくことで可能性は見つかるはずです」

この「連携」はイメージ以上の形を見せていた。今回のアワードで推薦された企業のひとつ、神奈川県茅ヶ崎市の由紀精密は自社を再生するだけでなく、リスクを背負ってまで同じ境遇にある他社を支援。専門性の高い異分野の技術をもつ企業を集めてホールディングス化し、製造業の底上げを目指す。また、技術をかけ合わせた挑戦を行っている。

京都のヒルトップはさらに企業という枠組みを超えて、学生らにも社内のラボを開放。インドなど海外の底上げまで視野に入れている。

「束になって強くなる」連携の先に、目指そうとする「高み」がある。これは選考過程でも強く感じさせられたことだった。

シリコンバレーの連続起業家として活躍したカピオンの曽我弘が、こんな話をする。

「昔、素晴らしい腕の医者に、その技術を他の人に継承させるよう頼んだことがありました。しかし、『十分に儲かっているし、他人が失敗したら自分の評判に傷がつく』と断られたことがあります。それでは100人の命を救うことはできても、世界で苦しんでいる3万人の命を救うことはできません」

つまり、曽我は「その技術は真の問題解決につながっているのか」と問うているのだ。

アドバイザリーボードとして彼は、「優れた技術や販路をもっていても、それに固執するのではなく、さらなる飛躍を目指す企業を高く評価した」と言う。

ちなみに曽我は、かつてDVDオーサリングシステムを開発し、自社をスティーブ・ジョブズに売却してDVDの普及に貢献した人物である。

彼のような経験豊富なアドバイザリーボードを揃えてスモール・ジャイアンツの選考を始める際、もう一つ、気づいたことがある。実は私たち編集部と同じことを考えている人や組織は多いということだ。

文=野口直希

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