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2019.01.25 16:35

バターの代わりにチョコに果汁を溶かす独創。「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」2代目シェフの挑戦

(写真はイメージ Brent Hofacker / Shutterstock.com)

(写真はイメージ Brent Hofacker / Shutterstock.com)

2017年に創立40周年を迎えたフランスの高級チョコレートブランド、「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」。2014年に他界した創業者ロベール・ランクス氏は、チョコレートの魅力「味わい」を世界中に広め、「ガナッシュの魔術師」とたたえられた。
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後を継ぐシェフ、きわめて斬新で独創的なクリエイティビティで知られるニコラ・クロワゾー氏のもと、メゾンはどのような展開をしようとしているのか。最高経営責任者のギヨーム・マザギル氏に聞いた。


(左)ギヨーム・マザギルCEO @Rouvrais、(右)ニコラ・クロワゾー(c)Stéphane de Bourgies

生クリーム・バター不使用、チコリを使った「ビヤンネートル」
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「M.O.F(フランス国家最優秀職人章)」を受賞したメゾンのシェフ、ニコラ・クロワゾーは、メゾンに入って20年になります。先代が存命中の2000年にデコレーション部門の責任者、2012年にはシェフに任命されています。

彼が作り上げたのが、100%天然素材だけを用いたまったく新しいチョコレート。「ビヤンネートル」と名付けられたこのコレクションでは、ガナッシュには欠かせないはずの生クリームやバターといった動物性の脂肪やタンパクを使用せず、代わりにフルーツのピュレや果汁を採用しています。

また、チョコレート素材の構造を支えるものとしてチコリの繊維を加え、なめらかな口上がりの実現につなげました。

ビヤンネートル

5種類の「ビヤンネートル」には、それぞれ違う果物や野菜が組みあわされています。100%植物由来で、100%天然素材。しかも上質な味わいはそのままで、口溶けの余韻は長く心地よい。

たとえばザクロやカボチャに種は、チョコレートに含まれるビタミンやポリフェノールを増やし、抗酸化作用やマグネシウムを高める働きがあります。

固定概念を打ち破ることは、私たちメゾンの重要な戦略です。クロワゾーは医師で栄養士のティエリー・アン博士の協力のもと、実に1年半かけてこの独創的なチョコレートを作り上げました。クロワゾーの創造から生まれた「ビヤンネートル」は、私たちメゾンが2セット目の「30の定番」を得る可能性も拓いてくれました。

ビヤンネートル

物理化学研究者や農家とのコラボも

コレクション「アンヴォール」は、物理化学博士ファブリス・リブレとの数年に及ぶコラボレーションから生まれました。ミキサーを補足的に使うことで、チョコレートに「空気」を含ませることを思いついたのです。ほんの少しの空気を加えることで、従来とはこれまでとはまったく異なる味わいや口溶けが実現しました。

なので、このコレクションでは、空気も材料の1つと言ってよいでしょう。空気こそが香りをチョコレートに閉じこめ、まったく革新的と言える、エアリーな口あたりを実現させたのです。

メゾンではこの他にも様々なコラボレーション商品を発表してきました。

バーテンダーとして初の「M.O.F」の称号を得たル・ブリストル・パリのバーテンダー、マキシム・ウルトとコラボした、ノンアルコールの「エスプリ・カクテル」や、ファッションデザイナーのティエリー・ミュグレーの代表的な香水「エンジェル」の香りを表現したコレクション。

中でも2015年に作りあげた「エスプリ・サレ」は、今後も定番になり得るコレクションです。「塩気」をテーマに、農家とのコラボレーションで、セップ茸やブラックオリーブ、タマネギ、パプリカといった野菜風味を生かして作り上げたチョコレートです。

また、創業40周年記念コレクションでは、ストリートアーティストのN.A.S.T.Y(パリの風景を題材にしたグラフィティ・アートが人気で、地下鉄の車体にペイントした作品でも知られる)にパッケージデザインを依頼しました。
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翻訳=竹若理衣 編集=石井節子 写真=Forbes France提供

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