だが、政治に関するそれぞれの戦術について掘り下げてみれば、類似点があることが分かる。それは、彼らが政治と経済に関して掲げる政策の裏にある文化的ポピュリズム(大衆迎合主義)というイデオロギーだ。
文化的な特性に基づいて人々を分断するこうしたイデオロギーは、長期的に見ればインドの金融市場と経済成長を台無しにする可能性がある。
国民を分断する戦略の「効果」
英トニー・ブレア・インスティテュート・フォー・グローバル・スタディーズ(TBIGS)によれば、文化的ポピュリズムは人々を「インサイダー(内部の者)」と「アウトサイダー(外部の者)」の2つのグループに分ける。
「インサイダー」はその国で生まれた人々であり、「アウトサイダー」は移民や民族的・宗教的少数派から犯罪者、国際的エリートまでのあらゆる人たちだ。
ポピュリストのリーダーは、グループ間の分断を深めるような戦略を用いる。そうした戦略の中には、人々に「私たちと彼ら」という考え方を助長するような政治的スタイルも含まれる。
モディとドゥテルテはどちらも、幾らかの違いはあるものの、こうした手法を取り入れてきた。モディは自らの人気を高めるために、愛国主義や宗教に頼っている。一方、ドゥテルテは少なくとも理論の上では、「法と秩序の維持」を訴えている。
ドゥテルテの理屈では、「アウトサイダー」の排除を保証すれば、フィリピンは麻薬関連の犯罪と汚職から解放されることになる。これらはフィリピンを悩ませ、持続可能な経済成長の実現を妨げ、不平等と貧困から抜け出すことを不可能にしてきた問題だ。
だが、実際にはフィリピンは、どちらの目標も達成できていない。汚職は現政権が発足して以降、悪化している。腐敗・汚職防止に取り組む国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルが発表した2017年の「腐敗認識指数」では、フィリピンの順位は前年から10ランク下がり、111位だった。
治安の面でも、改善は見られていない。麻薬密売の取り締まりにおいてドゥテルテが実施してきた残酷な戦術は、国民を分断してきた。そして、国連など人権問題を扱う国際機関におけるフィリピンの地位を低下させた。