ビジネス

2019.01.24

2児の母が昆虫テック企業の「暫定CEO」になるまで #NEXT_U30

ムスカ 暫定CEO 流郷綾乃

次世代を担う日本人は誰だ──。

連載「NEXT UNDER30」では、グローバルに活躍する30歳未満の経営者やアーティストをフィーチャー。昨年実施した「30 UNDER 30」特集で紹介しきれなかった、知られざる若手イノベーターたちを紹介していく。


「子供たちが80歳になったとき、多くの人に役立てる事業かどうかを指針にしてきました」

そう自身のキャリアを振り返るのは、国内外から注目を集める「ムスカ」の暫定CEO流郷綾乃。

ムスカは、イエバエを用いて有機肥料や飼料を生産、リサイクルできるシステムを提供する昆虫テック企業だ。2児の母でもある彼女に、自身の仕事に対する信念を聞いた。

──広報からキャリアをスタートさせたと聞いています。その道を志したきっかけはなんですか?

はじめから「広報の仕事をしたい」と思っていたわけではありませんでした。

私は21歳のときに長女を出産しています。シングルマザーだったので、生活のために稼がなければという思いが何より強かった。

出産後、当時住んでいた関西にある営業会社に面接を受けに行きました。コピー機やOA機器を販売している企業だったのですが、介護事業所のお客様が多いという話を聞き、「認知症予防にもなると言われているアロマを活用して、空間ビジネスをやれたらいいですね」と話したんです。

そうしたら社長も賛同してくれて、そのまま新規事業担当者として入社することになりました。

新しいサービスなのでもちろん営業もしたのですが、私、電話がとても苦手だったんです。電話を持つ手の震えが止まらないくらい苦手で。

そこで、「営業をせずともお問い合わせをいただくためには、もっとこのサービスや必要性をみんなに知ってもらう必要がある」と考えました。広報の勉強を始めたのはそこからです。

──苦手な営業をせずとも、事業を成功させるための手段として、広報を学ばれたのですね。

幸運なことに、広報に力を入れ始めてすぐに日経新聞に掲載していただきました。お陰様でお客様とのコミュニケーションも取りやすくなり、事業も回り始め、広報の面白さと必要性を実感しました。

「子どもを養っていくためにお金を稼がないといけない」と営業職を志望したにも関わらず上手くいかずに焦っていたので、「得意なものを見つけられた!」と手応えを感じられて嬉しかったです。

この経験から、「広報の力を使って事業をグロースさせていく経験をもっと積みたい」と思い、新規事業に積極的に取り組んでいるスタートアップに転職しました。

──その後フリーの広報として独立されていますが、独立しようと考えたきっかけはなんでしたか。

働いていたスタートアップの東京進出が決まったことがきっかけです。当時は関西で子育てをする予定だったので、「上京はできない」と退職しました。

その後、幸運にも数社からお声がけをいただき、ビジョンに共感した企業すべてとお仕事をしたかったので、フリーランスという働き方を選びました。独立しようと思っていたというより、共感する企業すべてとお仕事をするための手段がフリーだったんです。
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構成=小野瀬 わかな 写真=小田 駿一

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