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2019.01.25 10:30

Slackの直接上場の裏に潜む「ダイバーシティ推進」という狙い

Piotr Swat / Shutterstock.com

Piotr Swat / Shutterstock.com

世界で最も多くの利用者を抱える業務用メッセージアプリに数えられる「Slack(スラック)」が、直接上場(ダイレクト・リスティング)という異例の手法でIPOを計画中であることが明らかになった。
直接上場という形式のIPOは、スポティファイに続く稀な上場プロセスであり、そこが大きな関心を集めている理由の一つだ。しかし、ここで注目したいのはSlackが進めるダイバーシティ(人種的多様性)への取り組みだ。

Slackの従業員に占める黒人の比率は5.5%、ヒスパニック系が7%、混合的な人種が4%とされている。企業価値が昨年夏時点で、70億ドル(約7700億円)とされた同社は、黒人ビジネスリーダー向けメディアの「CultureBanx」からも、ダイバーシティ面で高い評価を得ている。

米国のテック系企業は人種の多様性の面で、遅れをとっている。米国の私企業全体の、黒人従業員比率の平均が14.4%であるのに対し、テック業界における黒人比率は7.4%にとどまっている。

Slackは直接上場という形式でIPOを実施することにより、通常のIPOより多くのベネフィットを従業員に与えることが可能だ。既に巨大な知名度を獲得した同社は、証券会社への手数料を削減し、投資家向け説明会のコストをかけることなく、資金を調達できる。

一般的なIPOでは、相場を下回る初値が設定されるため、初日の株価は大きく跳ね上がる。ハーバード・ビジネス・スクールの調査では、2018年3月時点のIPO初日の平均リターンは13.2%とされている。しかし、通常のIPOでは社員の持ち株にはロックアップ期間が設けられている。一方で、直接上場では誰でも好きなときに保有株を売却することができる。

ハーバード・ビジネス・スクールは、Slackは上場を行うにあたり、スポティファイの事例を参考にしたと指摘している。スポティファイは直接上場を行った結果、既存株主や社員らに対し、通常のIPOを上回るベネフィットを提供できたという。知名度が高いブランドを保有し、透明性の高い企業カルチャーを持つ企業の場合は、直接上場のほうが、メリットが大きいというのがハーバード・ビジネス・スクールの見方だ。

スポティファイの場合は、IPO前の参考価格が1株132ドルだったが、初値は165.90ドルに達し、約25.7%のリターンを上場で得ていた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、Slackの直接上場に関わるのは、スポティファイの上場をアドバイスしたゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレー、Allen & Co.の3社で、彼らは同じ成功を再現しようとしている。

Slackは今年の第2四半期に上場を果たそうとしている。これが成功に結びつけば、Slackはスポティファイに続いて直接上場を成功させた2社目の企業となる。今後は、エアビーアンドビーも同様な手法でIPOに臨むことが想定されている。

編集=上田裕資

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