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シネマ未来鏡


また、「ロッキー」という作品は、製作者にそのような意図があったかどうかは定かではないが、当時の「政治」の気分を反映した作品として機能しており、シリーズ全6作のうち半数が、ロナルド・レーガンとジョージ・ブッシュが大統領だった共和党政権下でつくられている。

スタローン自身も熱心な共和党支持者であり、シリーズ最高の興行成績を記録した第4作「ロッキー/炎の友情」では、ロッキーがソ連(当時)のボクサーと闘うという、当時の東西冷戦末期の政治状況を色濃く反映した作品ともなっている。

実は、最新作の「クリード 炎の宿敵」は、タイトルからも推し量られるように、ストーリー的には、この「ロッキー/炎の友情」の流れを組むものなのだ。「ロッキー/炎の友情」では、ロッキーの好敵手アポロ・クリードと、ソ連のまるでサイボーグのようなボクサー、イワン・ドラコが闘い、アポロはリング上で帰らぬ人となる。

「クリード 炎の宿敵」は、その33年後の設定で、アポロとイワンの息子、アドニスとヴィクターが拳を合わせるというストーリーだ。そのためか、前作「クリード チャンプを継ぐ男」よりも「ロッキー」色は強い。いろいろな関連記事を読むと、どうやらアイデアはスタローンから発したものだったようだが、これをまた彼が監督したら、たぶんかつての「ロッキー」に先祖返りしていたはずだ。

「ロッキー」の物語から出発しながらも、「クリード 炎の宿敵」は、かつての1980年代のヒーローにはなかった、シリアスな内面を秘めた新たな人間像も描いている。それは、まさに「クリード チャンプを継ぐ男」でクーグラーがつくりあげた新しい物語の遺伝子を、その後輩であるケイプル・Jr.が引き継いだようである。

とはいえ、もし、スタローンが、この「クリード 炎の宿敵」を監督していたら、どんな作品になっていただろうか。1980年代の「強いアメリカ」を体現する正統派ヒーローが生まれていたかもしれない。それはそれで、自己のアイデンティティの追求が重要視されるこの時代には、逆に新鮮に映ったかもしれない。

連載 : シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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