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シネマ未来鏡

主演のマイケル・B・ジョーダン(Photo by Juan Naharro Gimenez / Getty Images)

最新作「クリード 炎の宿敵」が好評を博す「クリード」シリーズは、あのシルヴェスター・スタローンが不屈のヒーローを演じた「ロッキー」からのスピンオフ作品だ。

スピンオフ、つまり「ロッキー」というシリーズ(全6作)からの「派生物」ということになるが、2015年に発表されたシリーズ第1作、「クリード チャンプを継ぐ男」は、もうそんな言葉など遥かに超越した、完璧に独自のクオリティを持った作品となっていた。

それは、「バットマン」からクリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」(2008年)が生まれたように、「ロッキー」(1976年)という作品から新たな世界を削り出した「クリード」という物語が誕生したと言ってもいい。

そのシリーズの第1作である「クリード チャンプを継ぐ男」(2015年)は、「ロッキー」で主人公が闘った世界ヘビー級王者アポロ・クリードの息子、アドニス・ジョンソン(マイケル・B・ジョーダン)が主人公だ。名前が示すように、彼はアポロが愛人とのあいだにもうけた子供であるため、最初は「クリード」と名乗ることはない。

主人公も監督もアフリカ系アメリカ人

物語は、そのアドニスが亡き父の活躍を思い描きながら、「クリード」の名に恥じないプロボクサーとなっていく過程が描かれていく。アドニスのトレーナーとしてスタローンが演じる老ロッキーも登場するのだが、あくまで主人公は、アフリカ系アメリカ人であるアドニスだ。この主人公の設定が秀逸で、物語に「ロッキー」シリーズとは異なった風を送り込んでいる。

批評家からも絶賛され、興行的にも好成績をあげた「クリード チャンプを継ぐ男」だが、その成功は、やはり監督であるライアン・クーグラーによるところが大きい。クーグラーもアフリカ系アメリカ人、大学卒業後すぐに「フルートベール駅で」(2013年)という作品を監督兼脚本し、インディペンデント映画を対象とするサンダンス映画祭で注目を集めた。

「フルートベール駅で」は、彼の生まれたカリフォルニア州オークランドで起きた、警察官によるアフリカ系アメリカ人射殺事件を題材にしたもの。実際の事件の映像も交えながら、主人公が射殺されるまでの1日を、斬新な演出で丹念に描いている。

同作は、けっしてエンタテインメント的でなく、社会的視点から主人公の存在に斬り込んだシリアスな作品だったが、そのクーグラーの映像作家としての才能に注目し、「クリード」シリーズの監督に起用した製作者の眼力は素晴らしい。

ちなみに「クリード チャンプを継ぐ男」を撮った後、クーグラーは、これまたアフリカ系アメリカ人を主役とした作品「ブラックパンサー」を監督して、メガヒットを記録。現在、弱冠32歳ながら、いまやハリウッドでは次回作が待望される映画監督のひとりとなっている。

文=稲垣伸寿

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