ナイロビ襲撃事件を機に考える、個人と企業の「賢い判断」

2019年1月15日、ケニア・ナイロビで起きた襲撃現場の様子(Getty Images)


情報が溢れるなか、グローバルなプラットフォーム・テクノロジー企業各社からは、いくつかのわかりやすい対応があった。例えば、グーグルマップは、事件があった場所に赤いドットと感嘆符とともに「Nairobi attack」と表示させ、地図を見ているひとが危険を回避できるような情報を発信していた。



ウーバーは、現地赤十字の献血の呼びかけに対応し、けが人が搬送されたナイロビの4つの病院の行き先に対しては、2回まで利用できる無料ライドのクーポンコードを発行した。この情報はツイッターなどソーシャルメディアで発信されたほか、アプリ上のメッセージとしても表示された。

筆者は、エアビーアンドビーを利用して市内のアパートに宿泊していたが、同社からは「ナイロビの重要な安全関連の連絡」というメールが届き、現地警察のツイッター情報などの対応策のアドバイスについての通知があった。



また、フェイスブック上では、災害時などもよく目にする、友人らに無事を連絡できる「安全確認」のサービスが稼働していた。

事件発生から12時間以内には、こうしたサービスが確認できたが、こうした迅速でわかりやすい対応は、過去にさまざまな事例を経験しているグローバル企業ならではだ。

グーグルは2013年にユーザーの投稿をもとに、リアルタイムで事故や渋滞などの情報を収集し地図編集を行うスタートアップ企業Wazeのサービスを買収し、同サービスのアラート機能をグーグルマップに導入している。

ウーバーは、2018年11月の選挙日には、投票所に行くためのライドが無料もしくは割引になるというプロモーションを行っており、今回のような動きも珍しいケースではない。また、エアビーアンドビーは、Airbnb Citizenというチャネルにおいて、公共性の高い活動を実施、発信しており、緊急災害支援および宿泊提供などにも注力している。

「賢いリーダーシップ」に学ぶ、判断と行動

非常事態の際、企業がどういった行動を起こすか、より厳密にいうと、トップマネジメントがどういうリーダーシップを発揮するかという件に関して、ハーバードビジネススクール(HBS)のケーススタディで、東日本大震災後の日本企業の事例が扱われている。

このケーススタディは、米ボストンにあるHBSのMBA過程の中の選択科目である「ジャパンIXP」の成果物だ。

IXPはImmersion Experience Program(現在は、IFC:Immersive Field Courseに名称が変わった)の略で、ある地域に滞在し特定のテーマについて学ぶ実践型の授業。「ジャパンIXP」は、東日本大震災を契機に、HBSの日本人学生のイニシアチブと同大学の竹内弘高教授の協力で実現した。
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文=MAKI NAKATA

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