子どもの歌と踊りから、貿易を教えるチャンスができた

Photo by Getty Images


分かりやすいように下図を見ながら読んでいただきたい。

いま世の中にA国とB国という2つの国家だけが存在すると仮定する。A国は250人、B国は150人の人口を抱えているとする。A国は自動車1台を作るのに200人、スマホを1台作るのに50人必要であり、一方で、B国は自動車1台を作るのに50人、スマホを1台作るのに100人必要であるとする。

この条件で、A国もB国も各国が自給自足をすると考えれば、A国もB国もそれぞれ自動車とスマホ、それぞれ1台ずつ作れることになる。



しかし、A国はスマホを作ることに比較優位があり、B国は自動車を作ることに比較優位があるため、それぞれが比較優位のある分野にだけリソースを集中したとすると、A国はスマホを5台、B国は自動車を3台作れることになる。

すると、2か国の合計で見ると、自給自足の際は自動車とスマホ2台ずつ作られるという結果だったのが、各国が比較優位のある分野に専念することで、スマホ5台、自動車3台と成果物の量に大きな差が出るのだ。

貿易について教えるチャンス

そこで、A国からB国へスマホを1台、B国からA国へ自動車を1台輸出すると、A国は自動車1台とスマホ4台、B国は自動車2台とスマホ1台となり、自給自足の時に比べればA国はスマホが3台多く、B国は自動車が1台多く手元に残ることになる。

この例から、各自が得意なことに専念するメリットは子どもたちも十分に理解が出来る。そこではじめて、貿易という言葉も使ってみる。言葉の意味自体は、国と国がモノを交換すると言えば、それで十分だ。

そして、もう一歩先まで踏み込んでみる。家の中で、日本製でないもの探し(中国製やベトナム製のものはいくらでもあるだろう)、地球儀や世界地図を見ながら生産国を探してみる。どこかの国から日本に運ばれてきたものだと教えてあげることで、日本という国や海外にはそれ以外の国があるということが、より具体的に理解することが出来るだろう。

ワクワクさせる仕掛けを自然に提供する

子どもたちに何かを教える時に、強制するのは愚の骨頂だ。いかに興味を持たせるか。最初のキッカケづくりと、いざ学びたいとなった時に自走できる環境づくり。これが親に求められることであろう。

なかでも、子どもたちがワクワクするような仕掛けは重要である。今回の件でいえば、先程見ていただいた表の中に、その仕掛けがある。表や数字が出てきてはいるものの、その要素が最小限に絞れているという点だ。各国が比較優位のある分野に集中すすることで全体の生産物の量が増えることがマジックのように見え、「なんで?」と、もう一度計算し直すなど興味を持っていた。

意外と知らない言葉や名前の由来などのトリビアでもよい。子どもたちの好奇心をいかに揺さぶり続けながら自走までもっていくか。これこそが家庭における金融教育のカギとなるだろう。

連載:0歳からの「お金の話」
過去記事はこちら>>

文=森永康平

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事