褒め言葉と批判を同時に伝えてはいけない理由

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同じ会話の中に褒め言葉と批判を混ぜ込むことは、誰かにクッキーを与えて、最初の一口をかじっている間にすねを蹴るのと同じだ。クッキーを食べることで感じるはずだった喜びを相手から奪ってしまう上に、心にネガティブな関連付けを植え付けてしまう。

イワン・パブロフ博士の条件反射実験で、犬がベルの音で食べ物を連想してよだれを垂らしたのと同じで、相手は再びクッキーを与えられたら、すねを蹴られるのではと思うようになるだろう。

上司から褒められている間、話題が批判に移るのではと常に身構えていた経験はあるだろうか? これは、褒め言葉の後すぐに批判が続く会話を長年経験しているために、パブロフの犬のような条件反射が脳の中で構築されている状態だ。心理学的には、褒め言葉は純粋にポジティブなものにし、批判は純粋に建設的である必要がある。このことは、データからも示されている。

私が創業したコンサルティング企業リーダーシップIQ(Leadership IQ)がインターネット上で実施し、1万4000人以上が回答したアンケート調査「あなたの個性は遠隔勤務とオフィス勤務のどちらに向いている?」では、次の2文から自分により近いものを選ぶ質問が含まれていた。

ネガティブなフィードバックを受けるときは
・ポジティブなフィードバックや褒め言葉と一緒に聞きたい
・何が悪かったのかについて、ありのままの率直な事実を聞きたい

驚くことに、ネガティブなフィードバックを褒め言葉と一緒に聞きたいと答えた人はわずか37%で、ネガティブなフィードバックは単に率直でありのままの方が良いと回答した人は63%に上った。

人々が率直でありのままの事実を聞きたがる理由の一つは、褒め言葉で空気を和らげてから批判を浴びせる行為に嫌気が差しているからだと考えて差し支えなさそうだ。ネガティブな条件反射が出来上がっている状態で、褒め言葉と批判を混ぜ合わせるという不誠実な扱いを受ければ、ひどくフラストレーションが溜まるだろう。
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編集=遠藤宗生

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